並行在来線会社名「ハピラインふくい」 未来に“福”はやって来るのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/8 ページ)
2022年、日本の鉄道は開業150周年を迎える。長い歴史ゆえに保守的な考え方に支配されやすい。しかし第三セクター鉄道会社は「道南いさりび鉄道」「IGRいわて銀河鉄道」など、保守的な考えを破ってきた。そして22年7月、新たなキラキラネーム会社が誕生する。「株式会社ハピラインふくい」、愛称「ハピライン」だ。
明るい名前は厳しい現実の裏返し
ハピラインに話を戻そう。並行在来線は赤字必至の事業だ。なにしろJR北陸線時代に稼ぎ頭だった特急列車は北陸新幹線に移行する。乗客の少ない地域輸送だけを任され、経営的には明るい未来を描きにくい。せめて名前だけでも明るく元気に。そんな思いも伝わってくる。保守的な鉄道業界に新風を吹かせたい。そんな反骨精神もうかがわせる。
興味深いことに、ハピラインは「鉄道・運輸機構」から6億2000万円の出資を受ける。理由は北陸新幹線の開業遅延の損害を補うためだ。いままで並行在来線の第三セクターは地域の自治体、民間企業の資本参加で設立してきた。「鉄道・運輸機構」の出資は異例なことではあるけれども「新幹線の建設主体が並行在来線に出資した」という前例をつくった。すでに新しい風が吹いたともいえる。
しかし現実的に経営環境は厳しい。ハピラインの事業区間は福井県内の敦賀と、石川県の県境を越えた大聖寺駅を結ぶ区間だ。距離は84.3キロメートル。21年3月時点で普通列車の運行本数は1日当たり102本、乗車人数は1日当たり約2万人、輸送密度は1キロメートル当たり約5600人/日。赤字ローカル線問題を追っていると約5600人/日は大きいと思う。しかし国鉄時代末期の分類で8000人/日以下は「地方交通線」と格下扱いだった。さらに「赤字だからバス転換しよう」という基準は4000人/日だった。つまり、特急列車がなくなれば、国鉄時代の鉄道維持限界利用者数に近づく。
一方、貨物列車は33本/日の運行がある。JR貨物は主要ルートと位置づけ、「日本海縦貫線」と案内する。ハピラインはJR貨物から線路使用料を受け取る。ただしそれは利益にはならず、線路維持コストで消えていく。線路使用料は旅客列車と貨物列車の運行本数で案分されるから、旅客列車を増発するとJR貨物からの収入は減る。
それにもかかわらず、ハピラインは県民の利便性を考慮して増便する計画を立てた。特急列車に遠慮して運行できなかった普通列車を自由に設定できるからだ。この辺りのさじ加減も難しい。
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