酒粕や廃棄ビールが“ジン”に! 担当者が「廃棄物の可能性は無限大」と語るワケ:エシカル・スピリッツ(2/3 ページ)
酒類業界で再生型蒸留プラットフォームを目指すベンチャーがいる。それが「エシカル・スピリッツ」だ。廃棄素材の酒粕を使用したクラフトジンの生産など、酒類業界で長年廃棄処分されている原料に着目。それらを活用した酒造りを展開している。
――コロナ禍による廃棄ビールも利用してジンにしていますね。最近はどのような活動をしていますか?
小野: 2020年に、コロナ禍で廃棄される危機があったビールを利用したエシカル・ジン「REVIVE(リヴァイヴ)」を発売しました。廃棄予定だった約8万杯のビールをバドワイザーから提供してもらい、ビールを蒸留しジンに変える技術を日本酒メーカーの月桂冠へ提供し、生産しました。
小野: また最近では、福島県双葉町と連携して製造したクラフトジン「ふたば」を今年2月から限定販売しています。福島県双葉町は、東京電力福島第1原子力発電所がある影響で、全町避難を余儀なくされていましたが、6月に中心部の避難指示が解除されます。
ただ、長らく人が住んでいなかったため、そこに特産物などがない状態です。そこで、福島県郡山市の酒蔵「仁井田本家」による粕取り焼酎を原酒に、福島県いわき市産のトマトや仙台市産マリーゴールドといった被災地で採れるボタニカルを使用して、双葉の特産品第一号を作ろうとご一緒しました。
――なぜ多くの商品をジンにしているのでしょう。
小野: 一番の理由は、商品として多様性があるところです。ジンは基本的に、ジュニパーベリーという果実を浸透させて蒸留させます。逆に言うと守るべきルールはそれのみなので、さまざまな廃棄酒に対応できます。
また、蒸留酒はアルコール度数が高いので廃棄することなく半永久的に飲めることも、私たちのビジョンにあったお酒だと思っています。
――現状、課題などはありますか。
小野: まだ自社で所有している蒸留所が小規模なことです。当社が拠点とする「東京リバーサイド蒸留所」にはシンプルな蒸留機を設置しています。酒粕そのものからアルコールを抽出するには別の機械が必要ですが、現状その工程は外注しています。
協力会社には、「千代むすび酒造」(鳥取県境港市)などがありますが、酒粕からお酒を造ってもらい、その状態にして当社に仕入れています。
その課題を解決するため、今秋ごろの完成を目指して千葉県に大規模な蒸留所を建設中です。そこでは、クラフトジンの増産分や、外注に頼っている「酒粕からアルコールが抽出ができる機械」も設置し、その工程も内製化する予定です。
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