鉄道会社が使う電力はどうすればよい? 東急や東京メトロなどの取り組み:鉄道の環境戦略(4/4 ページ)
鉄道会社では近年、再生可能エネルギーへの取り組みに力を入れている。東急電鉄が開始した「再エネ100%で鉄道運行」をはじめ、各社の動向をまとめた。
自社の電力は自社で
西武鉄道の山口線(レオライナー)では、使用する電気使用量のすべてを、自社で運営する「西武武山ソーラーパワーステーション」が発電する環境価値が付いた電力で運行している。これは非化石証書が付くものである。
西武武山ソーラーパワーステーションは神奈川県横須賀市にあり、発電電力量は約956万kWh、一般家庭約2660世帯分の電力を発電できる太陽光発電所である。年間約300トン排出していたCO2を実質ゼロにできる。西武グループでは30年度までに18年度比25%のCO2排出量削減を目指している。
こういった動きで一歩先に進んでいるのが東京メトロだ。東京メトロは、地上駅に太陽光発電を設置することに注力している。
メガソーラー規模の「東西線ソーラー発電所」が稼働
すでに15年には、東西線地上駅8駅で合計最大出力1MWとなるメガソーラー規模の「東西線ソーラー発電所」ができており、そのころには東西線だけではなく日比谷線の南千住駅や千代田線の北綾瀬駅にも太陽光発電システムの設置が完了していた。
21年3月には丸ノ内線四ツ谷駅にて、ホーム屋根上で太陽光発電システムが稼働。164kWの発電が可能になり、年間69.7トンのCO2削減が可能だ。
同年5月には、千代田線北綾瀬駅で太陽光発電システムを既設の20kWに加え12kW増設、32kWとなった。
これらの電気は、駅などで使用されるという。
鉄道各社の再エネへの取り組みは、イメージ戦略だけではない。単に電力使用量を削減するだけではなく、電力網全体への負荷を下げることができる。鉄道に必要な電力をどう調達するかを考えることで、自社の環境への取り組みを実証することもできる。
環境戦略を立てることで、自社事業の持続可能性を証明し、利用者などに信頼できる鉄道会社であることを世の中に伝えられるのだ。
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