「望まない転勤」をやめてほしい社員 vs 不都合が生じる企業 2パターンの解決策:どうなる? 強制転勤廃止(4/4 ページ)
社員が望む働き方を実現する施策の一つとして重要な課題といえる「強制転勤の廃止」。社員側・企業側双方メリットがある一方、企業側にデメリットが生じる場合もある。しかし、結局状況を変えずにいると、優秀な人材の確保・定着の機会を逸してしまう。では、具体的にどのように検討を進めればよいのか、論点と手法をまとめた。
B.地理的な制約を大きく受けない業種・職種の場合
A.地理的な制約を大きく受ける業種・職種とは違い、地理的な制約を大きく受けない業種・職種は「そもそも転勤の必要性が相当低くなった」可能性もあるだろう。
連載第1回で述べたように、人材配置施策において“転勤”は必須ではなく、代替手段として、遠隔から業務を行える可能性が出てきた。人材育成施策でも同様に、物理的に移動しての経験は不要という可能性もある。
こうした業種・職種の企業では、雇用区分も設けずに「(2)原則“強制”転勤なし」パターンも選択肢に挙がる。
ただし、その判断を下すには、
- 1.転勤実態調査(過去の転勤数、転勤が発生した事由・必要性……など)
- 2.社員の業務実態調査(遠隔対応可能かどうか、出来ないポスト・仕事は何か)
- 3.希望エリアに配属を割り振りしなおす場合、勤務希望地調査(偏りの発生が、遠隔でも許容範囲かどうか)
……など、さまざまな現状確認・検証プロセスが必要だろう。
現状確認・検証の結果、ほとんどの業務で遠隔対応が可能で、転勤総数自体もかなり減らせるめどがある場合は、大きく舵を切って“原則、望まない転勤の廃止”でもよいだろう。
(1)イレギュラー扱いの転勤者への対応
仮に、ほとんどの業務が遠隔で対応可能でも、転勤が必要になる場合もある。遠隔業務で対応不可なポジションの業務の空き枠に対し、社内外の募集で適任者が見つからなかった場合、スピーディに事業を推進しようと思えば、社内の適任者に企業側から打診して、転勤させざる得ない状況もあるだろう。
そのため、そうしたイレギュラー扱いとなる転勤ルールを見直しておく必要はある。本人が望まない勤務地への転勤となる場合は、経済的インセンティブを明示し、例えば最大5年間など期限付きであることを明示するなど、今後のキャリアが描きやすく、同意が得やすい施策の検討が必要である。
(2)転勤総数を減らすこと・リモート転勤の留意点
余談になるが、社員は希望する勤務地で働くことができる……という施策をとると、組織のマンネリ化も起き得る。その一方、リモートワークが普及した今、物理的な異動は伴わず「リモート転勤」も可能である。そうしたリモートを前提とした組織の在り方に見直す企業も出ている。
そのような施策が進んでいけば、今後も非対面コミュニケーションは続く。この2年あまりコロナ禍で、目的があるコミュニケーションはWeb会議、各種ツールを使えば問題がないことも分かってきた。しかし「ちょっといいですか」から始まるコミュニケーションや、雑談から生まれるアイデア創出の機会が減る、新しく組織に入った社員は既存メンバーと打ち解けにくい……といったケースもある。
だからこそ、転勤制度見直し(それに伴う、テレワーク制度見直し)といったハード面の整備と合わせて、組織全体の生産性を意識した、ソフト面での工夫もあわせて考えて進めることが重要だろう。
現在進行形でさまざまな企業が施行錯誤しているが、タテのつながりである1on1だけでなく、ヨコのつながりを意識したオンラインでの雑談の場を設ける、出社定例日を作るなど、人事や管理職が意識的に取り組み、組織の生産性を高めるつながり・場づくりを意図して提供していくことも重要だ。
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