浅草で142年続く「すき焼き店」を事業承継 老舗が決断に至った背景とは?:コロナ禍で閉店(4/6 ページ)
外食事業会社WDI GROUPは、創業142年を誇る浅草のすき焼き店「ちんや」の暖簾(のれん)を承継した。新型コロナウイルスの余波が経営を直撃し、21年8月に閉店を余儀なくされた。しかし、伝統あるすき焼き文化を絶やしてはいけないとWDIが事業を受け継ぎ、場所を移転して再オープンすることとなったのだ。
スタッフに気を配る
事業承継にあたりどのくらいのスタッフが新しい店で働くことになるのか清水社長に聞いた。
「以前のスタッフ約20人のうち10人に移籍してもらっていますが、この10人はコアのメンバーです。内訳は和食部門と精肉部門で構成される厨房が合計8人、ホールで2人です。WDIからはホールを中心に人材を投入して、フレッシュで、元気があり、スピード感のあるホールにできたらと思っています」
住吉六代目は「閉店した翌日から、WDIさんに入るにあたっての面接はいつやるという話をしていました」といい、清水社長は「契約上は退社→入社ということになるので、いかにして安心して来てもらうかに気を使いました」と話す。
清水社長は気を引き締める。
「住吉さんには六代目として少なくとも2年半くらいは面倒を見ていただきたいと思っています。それまでには私たちもしっかり独り立ちできるようにしないといけませんね」
住吉六代目は、ちんやの常連客や取引先などのネットワークを承継するという。
現在の店はもともと、約100年の歴史があるてんぷら割烹の「金泉」の物件だったものだ。金泉自体は店を閉じ、自社物件を賃貸することに方向転換。ちんやに貸し出すことになった。事業承継ということで新しい店でも、ちんやの以前の店と同じような雰囲気にすることを目指す。清水社長はいう。
「明治モダン、大正ロマン……今風に言えば『鬼滅の刃』ですかね(笑)。改修費に1億5000万円かけました。歴史がありますから恥ずかしいものは作れません」
店内は着物の帯、日本庭園を意識した石など、日本人なら間違いなくノスタルジーを感じる雰囲気を作り上げた。一方で、座椅子がある和室もあれば、立ち上がるのが大変な客を意識して普通のテーブル席を畳の大部屋に設置するなど、あくまでも客目線での座席配置を考えている。
「最近はあまりみかけなくなった広いお座敷がある店を実現させたかったのです。今はコロナ禍ではありますが、宴会という文化は無くしたくない考えがありました」(清水社長)
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