上方修正からさらに上振れのマネフォ決算 SaaS ARRは40%増の129億円に(2/4 ページ)
再び事業成長にフォーカスし、いったんの黒字化を経て投資を再度強化したマネーフォワード。4月13日に発表した第1四半期(2021年12月−2022年2月)決算は、計画を大きく上振れした着地となった。
法人向け導入 27%増
好調な中身をもう少し分解してみよう。注目なのは、マネーフォワードの売り上げの72%を占める、バックオフィスSaaS事業のビジネスドメインだ。最大セグメントながら、ARRの成長率も47%と最も高く、同社の成長のけん引役となっている。
SaaS企業が最重視するARRは、課金顧客数×単価に分解できる。このうち課金顧客数については、前年同期比30.7%増の20.1万と大きく伸びた。もっとも、顧客の半数は1万1700円程度と比較的単価の安い個人事業主だ。9万3000円超という高単価の法人顧客についていえば、27.1%増となっている。
これは21年秋に買収したAIチャットボット運営企業HiTTOによる影響のほか、過去最大規模となる広告宣伝費が効いている。第1四半期は過去最大となる17億円あまりを広告費に費やした。この効果は、ビジネスドメインでの顧客獲得数が対前年比1.5倍(1.8万社)と出ている。
テレビCM、Web、タクシーなどを使い、広告を行った結果、「マネーフォワード クラウド」というワードで検索して流入する数が1.4倍になるなど、しっかりと広告効果が上がっている。
顧客数の増加だけでなく、単価も上昇した。法人顧客の単価は9万3031円と前年同期比で15.4%の増加。買収したHiTTO顧客を除いても、8万8727円と10.1%増加している。これは、中堅企業向けに一部価格を改定して値上げした効果のほか、中堅企業の比率が増加したこと、また企業が利用するプロダクトの数が増加したことが影響している。
マネーフォワードは、クラウド会計を中心におきながら、債権、債務、固定資産、経費などの経理領域のプロダクトを個別で用意。さらに、社会保険、給与、勤怠、人事管理など人事労務向けのプロダクトを用意するなど、機能別にプロダクトを分けて提供している。企業側からすると、必要な部分だけを導入すればよく、お試しで1つ導入することもやりやすい。逆にマネーフォワード側から見ると、新たなプロダクトを導入してもらうたびに、単価がアップすることになる。
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