「アコム」に迫る勢いのLINEポケットマネー “10代とやり取り多い40代”は延滞リスクが低い?:金融ディスラプション(2/3 ページ)
スマートフォンを使い、個人向けに与信から貸し出しまでを行う、LINEポケットマネー(LINEクレジット運営)が好調だ。2019年8月のサービス開始から、22年3月末で申込件数が累計100万件を突破した。
LINE内コミュニケーション傾向で与信
もう1つの特徴が、どのくらいの額をどんな利率で貸し出せるかを判断する、いわゆる与信判断だ。伝統的な与信は、年収や雇用形態、会社名や勤続年数といった属性データと、他社借入情報や延滞情報といった信用情報の組み合わせで判断していた。
そこに昨今増加してきたのがビッグデータを用いた与信判断だ。銀行口座の入出金履歴を元に、機械学習などを用いて与信判断を行う仕組みはトランザクションレンディングとも呼ばれ、EC事業者向け貸付などで広く活用されている。さらにフリマアプリ大手のメルカリ内での取引情報を使い、与信判断を行っているのがメルペイだ(記事参照)。
LINEポケットマネーでは、LINE内でのコミュニケーション傾向を用いて与信判断を行う「LINEスコア」を用いる。「内部検証を行い、慎重にモデルの改善をしていた。21年11月からはテレビCMも行うなど完成度が高まった」と山岡氏は話す。その手法はどういったものなのか。
実は、LINE利用におけるコミュニケーションの傾向は、延滞や貸し倒れの結果と明確な相関関係がある。例えば、「1カ月前より友だちのフォロー数が減少しているユーザーは、延滞や貸倒のリスクが高い」とか「40代以上のユーザーが10代からのメッセージを受信した割合が高いほど、リスクが低い」などだ。
これらはデータを元に機械学習によって導かれたものなので、どうしてそうなるのかは推測するしかない。それでも、短期間で友だちの多くをブロックしているユーザーは、既存の人間関係から離れなくてはいけないような出来事があったのではないか、とか、10代からのメッセージをたくさん受け取る40代は、子供の親で、家族間でLINEを活用しているのではないか、などが想像できる。
さらに、「グループへのメッセージ送信が多いほどリスクが低い」「LINEギフトでの注文金額が増えるほどリスクが低い」など、意外なところで延滞や貸倒に相関する結果が現れている。
関連記事
- LINEポケットマネー、2年で累計申込件数70万件突破 24カ月連続残高が伸長
LINE Creditは9月6日、提供するスマホ少額融資サービス「LINEポケットマネー」がサービス開始2年で累計申し込み件数が7月時点で70万件を突破したと発表した。また、24カ月連続で残高が伸長し、累計貸付実行額は300億円を突破した。 - BNPLなぜ伸びる? 日本市場特有の理由とは
世界的に大きな潮流となっているのがBNPLだ。これは、「Buy Now Pay Later」の略で、いわゆる「後払い」サービスのことを指す。BNPLはクレジットカードに代わる決済方法として、世界各国で急速に伸びているが、それはなぜか。国内BNPL市場で40%程度のシェアを持つトップ企業ネットプロテクションズによると、実は国ごとに理由は異なるようだ。 - AI与信解禁 メルペイに聞く「何が変わるのか?」
4月に改正割賦販売法が施行され、AIやビッグデータを使った与信審査が解禁された。メルカリ子会社で決済サービスを営むメルペイは、これに対応を「AI与信」を提供する計画だ。しかし、もともとメルペイはメルカリの売買履歴データやメルペイでの決済データを用いて、与信を行っていたはず。法改正で何が変わるのだろうか? - ファミペイ翌月払い、新制度活用の狙い 公共料金や税金にも対応
ファミリーマートは9月3日、コード決済サービス「FamiPay」の後払いサービス「ファミペイ翌月払い」を9月7日に開始すると発表した。残高がなくても最大10万円まで支払いに使える後払いサービスで、利用額は利用の翌月末に指定した銀行口座から引き落とされる。手数料はかからない。公共料金や税金の支払いにも使えることがFamiPayの特徴であり、翌月払いでもFamiPayボーナスが貯まる。 - 与信機能もサービス化 行動データを融資につなげるクレジット アズ ア サービス
自前主義が普通だった金融業界で、さまざまな機能のサービス化が進んでいる。金融サービスの本丸である与信と融資機能をサービスとして提供することを目指しているCrezitは、「Credit as a Service、与信に必要な機能を外部に提供することを目指している」という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.