どうなる裁量労働制──本来の裁量がない、過労自殺などの事例も:これからの「労働時間」(1/4 ページ)
リモートワークの普及によって、自由度の高い働き方への関心が高まっている。労働者に働く時間などの裁量をゆだねる「裁量労働制」は今後普及するだろうか? そのために、今後解決すべき課題とは?
リモートワークの普及によって自由度の高い働き方への関心が高まっている。制度としてはフレックスタイム制の導入企業が徐々に増えているが、それと並んで「裁量労働制」の適用業務の拡大や手続きの緩和を求める声が高まりつつある。
裁量労働制とは、労働基準法38条に定められている、業務の時間配分や遂行手段が労働者の裁量にゆだねられている労働契約のことだ。
現状、裁量労働制が働く人たちに広く認知されているとはいえない。裁量労働制には企画業務型裁量労働制(企画型)と専門業務型裁量労働制(専門型)の2つがあるが、いずれも導入企業が少ないからだ。
厚生労働省の2021年「就労条件総合調査」によると、専門型導入企業の割合は2.0%、企画型が0.4%。労働者の割合は専門型が1.2%、企画型が0.3%と少ない。
どういう制度なのか整理してみたい。
「働く時間」を柔軟化した制度
日本の法定労働時間は周知のように1日8時間、週40時間と決められ、それ以上働かせる場合、使用者は割増残業代を支払わなくてはいけない。
その労働時間規制を弾力化できる制度は、大きく「変形労働時間制・フレックスタイム」と「みなし労働時間制度」の2つに分かれる。裁量労働制は、みなし労働時間制度の一部だ。
1.変形労働時間制・フレックスタイム
変形労働時間制は簡単に言えば、1カ月以内の期間を平均して法定労働時間を超えない範囲であれば、特定の日・週で法定労働時間を超えて働かせられる制度だ。1週間単位、1カ月単位、1年単位の変形労働時間制度がある。ただし、総労働時間の平均が法定労働時間を超えたら割増賃金の支払いが必要だ。
フレックスタイム制は3カ月以内を限度に、出・退勤時間を自由に決められる制度であるが、同じように1週40時間、あるいは1カ月の法定労働時間を超えると割増賃金を支払う必要がある。
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