どうなる裁量労働制──本来の裁量がない、過労自殺などの事例も:これからの「労働時間」(2/4 ページ)
リモートワークの普及によって、自由度の高い働き方への関心が高まっている。労働者に働く時間などの裁量をゆだねる「裁量労働制」は今後普及するだろうか? そのために、今後解決すべき課題とは?
2.みなし労働時間制
変形労働時間制やフレックスタイムより、労働時間規制が緩い仕組みが、みなし労働時間制だ。これには「事業場外みなし制」と、前述した企画型と専門型の裁量労働制の3つの制度がある。
事業場外みなし制は、その名の通り、職場外で働く人が労働時間の計算が難しい場合に、所定労働時間を働いたものとみなす制度だ。
裁量労働制は実際の労働時間が9時間や10時間であっても、会社がみなした労働時間が8時間であれば、割増賃金(残業代)を支払わなくてもよいとする制度だ(ただし深夜労働や法定休日労働は残業代を支払う)。
例えば、みなし労働時間を9時間とした場合、法定労働時間の8時間を超えているので1時間分の割増賃金を織り込んだ手当をつける必要がある。実際には特別手当、裁量労働手当などの名目で支払われている。
ただし、どんな社員でも適用されるわけではなく、専門型は新商品や新技術の研究開発、人文科学や自然科学の研究、情報処理システムの設計、新聞記者など19業務が指定されている。
一方、企画型は企画部門で経営環境を調査分析し、経営計画を策定する業務、企業の財務部門で財務状態などを調査・分析し、財務計画を策定する業務などに限定されている。
裁量労働制の実態は?
裁量労働制は本来、原則として労働時間規制の縛りがなく、出・退勤も自由であり、上司から頻繁に指示を受ける必要なく、それこそ自己裁量で仕事ができる制度として導入された。フレックスタイムは法定労働時間の縛りがあるが、さらに自由度が高い働き方といえる。
ところが、長時間労働をさせたり、裁量性がない働き方を強いるなど、過去には制度を悪用する企業もあり、紆余曲折を経てきた。
関連記事
- 「氷河期の勝ち組」だったのに……40代“エリート課長”に迫る危機
自分をエリートだと信じて疑わなかったサラリーマンが、社内の方針転換により出世のはしごを外されることがある。エリート意識や、能力主義への妄信が生む闇とは──? - 「転職は裏切り」と考えるザンネンな企業が、知るべき真実
「お前はどこに行っても通用しない」「転職は裏切りだ」──会社を去ろうとする若手社員に、そんな言葉を投げかける企業がいまだに存在する。そうした時代遅れな企業が知らない「新入社員の3割が辞めてしまう理由」や、「成長企業できる企業の退職者との向き合い方」とは? - 「週休3日制」は定着するのか? 塩野義・佐川・ユニクロの狙い
コロナ禍で働き方の自由度が増す中、選択的週休3日制の導入を検討する企業が増えている。選択的週休3日制は定着するのだろうか? 導入各社の狙いはどこにあるのか? 人事ジャーナリストの溝上憲文が解説する。 - 全国15棟のドーミーインで、「ホテルに暮らす」サブスク提供 狙いは?
共立メンテナンスは3月31日、ホテル暮らしのサブスクサービス「goodroomホテルパス」内で、新たにドーミーイン14棟のマンスリープランの提供を始めた。従来の宿泊だけではない、「ホテルに暮らす」「ホテルで仕事する」といった需要を狙う。 - これは立派な社会問題だ――「働かないおじさん問題」と正しく向き合うべき理由
「働かないおじさん」という言葉を目にする機会が増えた。一方で、実際にミドルシニアの問題に悩む企業の話を聞くと、「本人が意図的にサボっている」というサボリーマン的な内容はごくわずかだ。「働かないおじさん問題」はどこから生じているのか、その本質について考察する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.