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何度も使える「2750円のタオル」は、なぜ1週間で完売したのか水曜日に「へえ」な話(3/5 ページ)

タオルの価格は2750円――。この話を聞くと「高いなあ」「誰が買うの?」と思われたかもしれないが、吸水スポンジメーカーのアイオンが発売したところ、売れに売れているのだ。高価なタオルは、どのような構造をしているのかというと……。

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価格と生産性

 このように書くと、「まあまあ順調じゃないの? サクセスストーリーの第一歩だよね」と思われたかもしれない。商品開発にあたっての課題や問題点など、すべての悩みは吸水スポンジで吸い取ったかのように感じられたかもしれないが、全く違う。

 suuuに使われている素材は「PVA」と呼ばれるモノに対し、STTAは先ほど紹介したように「ソフラス」である。この2つにどのような違いがあるのかというと、suuuを使うには水を含ませなければいけないが、STTAは乾いた状態でも使うことができる。

 繰り返しになるが、アイオンの課題は「suuuの生産性が悪いこと。同じ素材を使って、利益率の高い商品を開発しなければいけない」である。にもかかわらず、なぜ違う素材を使うことになったのだろうか。


STTAの利用シーン

 アイオンは日常生活でも使えるアイテムを開発するために、ブランディングやデザインなどを手掛けている「kenma」(東京都新宿区)と組むことに。kenmaの今井裕平さんの手元に、suuuで使っている素材が届いたものの、疑問を感じたという。「日常での利用シーンを考えているのに、濡らさないと使えないのは不便なのでは」(今井さん)と。

 確かに、その通りである。suuuはキッチンなどでの利用シーンを考えているので、近くに水がある。しかし、外出時に都合よく水があるとは限らない。水滴を拭きたいのに使えないとなると、ユーザーのストレスは“水たまりのように”たまっていく。「それではいけない。なにか違う方法はないかな」と考えていたところ、同じ段ボールの中に入っていたソフラスに目をつけたのだ。

 ソフラスは水を使わなくても水滴を拭きとることができて、しかも絞れば何度でも使うことができる。今井さんは「こっちの素材のほうが使いやすいのでは」と考えたものの、大きな課題が立ちはだかる。「価格」だ。

 ソフラスを使ってタオルをつくれば、価格は2000円を超えてしまう――。アイオンの関係者はどのようにつくっても高価格になることは分かっていたので、「タオルをつくるのであればsuuuの素材で……」と考えていた。しかし、その素材を使うと、利便性がよくない。商品開発を進めるにあたって、課題がまたひとつ増えてしまった。

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