ネットカジノに消えた4630万円 「仮想通貨で隠蔽」は可能なのか?:本田雅一の時事想々(4/4 ページ)
阿武町が、総額4630万円の給付金を一人の男性に誤送金してしまった問題が連日、報道されている。容疑者はネットカジノでお金を使い果たしたとされている一方で、使わないまま資産を隠した可能性も考えられる。ネットカジノを経由して、マネーロンダリングをすることは可能なのだろうか。ITジャーナリストの本田雅一氏が考察する。
出所後に、価値高騰の可能性も?
ここまでは、仮想通貨を扱ったことがある人の多くが簡単に思い付くことだろう。
仮想通貨にもビットコインやイーサリアム、リップル、USDTなどさまざまなものがあるが、仮想通貨のシステムを維持するノードを特定業者などが運営するトークン(Binanceなど)でなければ、管理する組織すら存在しない。
仮想通貨の取引はブロックチェーンに記録され、改ざんすることはできない。しかしながら、ウォレットの保有者が誰なのかを突き止めるのは極めて困難だ。さらに複数のウォレットに細かく分散して再送金したり、異なるトークン間でのクロス取引などが行われていれば、さらに追跡の難易度が上がる。とりわけ管理主体となる組織が存在していない大多数のトークンでは、捜査は困難だろう。
資産が確認できなければ、返済の意思を示していても、収入に応じた返済計画通りに少しづつ弁済させるほかない。
田口容疑者が実際にどの程度の刑に処されるのか分からないが、懲役の実刑が出たとして数年後にコールドウォレットから仮想通貨を取り出すと、元の3592万円はもちろん、誤って振り込まれた4630万円よりも高い価値になっているかもしれない。
よく知られているように仮想通貨はボラリティ(価格変動幅)が大きく、例えばコロナ禍には大幅に価格が伸びた。その一方で昨今はその価値が急落するなど、短期的に資産が大きく減ってしまうリスクはある。
しかし数年単位などの長期で見た場合、ビットコインは概ね上昇を続けてきた。実刑を受けて数年後に出所した時、隠し持った仮想通貨が大幅に上昇しているということも可能性としては十分にある。実際に昨年末には、ソニー生命の社員が海外連結子会社の米口座から170億円を不正取得し、それらをビットコインに交換していたという事件も起こっている。
繰り返しになるが、実際に田口容疑者が、数年後の価格上昇なども見込んで資産隠しを図ったのか、それとも本当に使い切っているのかどうかは分からない。確実に言えるのは、海外事業社が運営する「ネットカジノ口座の動き」が見えない限り、27万ドルの行方は見えてこないということだろう。
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