ディズニー入園料、30年で約2.5倍! 今後どこまであがる? 「綿密な戦略」を専門家が徹底解説:開園当初は4200円(4/4 ページ)
2021年10月、東京ディズニーリゾートのパークチケット価格(入園料)が最大700円値上げされた。ディズニーの価格改定をひも解いていくと、値上げで得た利益をサービス向上に投資し、顧客の満足度を高めるプライシング戦略が見えてきた。
ディズニーの値上げ戦略をどうビジネスに生かすか
ここまで東京ディズニーリゾートの値上げ戦略を見てきました。帝国データバンクの値上げに関する調査では、6社に1社が「値上げしたくてもできない」と回答するなど、多くの企業が値上げに関する課題を抱えています。では多くの企業は、ディズニーの値上げ戦略をどのように参考にすればよいのでしょうか? ポイントは大きく2つあります。
1、自社商材のWTPを知る
WTPとは、Willingness to payの略で、製品やサービスに対して消費者が「これくらいなら支払ってもいい」と思える金額のことを指します。これらは、顧客に対するアンケートや専門家への依頼で導き出すことができます。WTPを活用し値上げをしたケースでは、売り上げと顧客数が共に増加することも珍しくありません。
2、値下げによる付加価値向上をやめ、値上げによる利益で何を行えば顧客のエンゲージメントを高められるのか理解する
多くの企業では、価格変動によって顧客に対する付加価値提供が行われています。しかし、現状の選択肢は「値下げ」が取られがちです。ディズニーリゾートのパークチケットを例に挙げると、値上げによる利益で新たなアトラクションを建設することが顧客の確かなエンゲージメント向上につながっています。このように「利益で何を顧客に提供できるか」を考えることは値上げの重要な視点です。
筆者自身、お客さまとの会話の中で「値上げが怖い」という声をよく耳にします。しかし、現在の市場環境では値上げをしないことがリスクになってしまうこともありえます。今回の記事をきっかけに、ビジネスに重要なプライシングについて考えていただく機会になれば幸いです。
著者プロフィール
高橋 嘉尋(たかはしよしひろ)
プライシングスタジオ代表取締役社長。
これまでリクルートをはじめとする大手企業から、「money forward」など中小企業まで数十サービスの価格決定を支援。
また、公的機関、学会、雑誌などへのプライシングに関する論文提出や講演会、寄稿などを通じ、プライシングに対するノウハウを積極的に発信。
プライシング専門メディア【プライスハック】監修。
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