「裁量労働制=悪」ではない うまく運用できる企業の“4つの特徴”:これからの「労働時間」(3)(3/4 ページ)
働きすぎによる健康被害の懸念など、批判されることの多い「裁量労働制」。しかし、柔軟な働き方に満足している人も多い。うまく運用できる企業とそうでない企業の違いはどこにあるのか。実際の事例を参考に、人事ジャーナリストの溝上憲文氏が解説する。
両社に共通する「4つの特徴」
両社に共通する特徴が4つある。1つ目は、裁量労働手当が充実している点だ。
A社は基本給の3割を手当としている。大企業の30歳の所定内賃金は約35万円で、その3割を計算すると10万5000円になる。
B社は所定時間外労働の45時間相当の手当を支払っているが、仮に1カ月の所定労働時間を160時間とすると時間当たりの賃金は2187円。これに時間外割増賃金を乗じた45時間の手当は約12万3000円(2187円×1.25×45h)。
社員にとってはかなり魅力的な額であり、裁量労働制に対するチャレンジ意欲も高まる。
ただしそれだけに、職場や上司から所定時間内でも終わらない仕事を振られても、断れない社員が発生する可能性もある。それを防ぐ2番目の特徴として、実労働時間の管理がある。A社は時間外労働が月80時間超の場合、自動的に翌月から適用除外とし、産業医などによる健康診断や面接指導を実施。B社も単月で80時間超、または3カ月平均で70時間超の場合、適用除外措置と医師の健康指導を行うルールを設けている。
3番目は裁量労働制の適用の有無に関して本人同意を求めていることだ。A社は本人から適用除外の申請があった場合、月単位で適用除外としている。B社も同様に不同意者を適用しないことにしている。
また、裁量労働制を適用しても職場の異動によって仕事の内容も変われば、取引先も変わるなど事前の想定とは違った状態になることもある。その結果、裁量性が少なく仕事量が増大する懸念もある。
4番目の特徴としてそうした場合のチェック体制も重要になるが、A社は「裁量労働制にそぐわない状況となることが見込まれている場合、無理強いはしない」ことを原則としている。B社は人事部主導でまず対象部署の部長に本人の業務内容や上司の指示の有無・程度について確認し、さらに人事部で適用可否を判断するなど二重のチェックを行っている。
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