「最近の若者はすぐ辞める」と怒る前に知るべき、「仕事が合わない」と言い出す新人の真実:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
“辞める新入社員”が話題になる季節だ。近年は「仕事が合わない」と話す若者が特に目立ち、連合の調査でも退職理由のトップとなっているが、これにはキャリア教育や上司とかかわりが深く関係しているという。「仕事が合わない」と言い出す新人の真実とは――。
キャリア教育の功罪
キャリア教育という名のもと、学生たちは自己分析や他己分析をやらされ、「自分の強み探し」をやらされました。
たった20年、しかもそのうちの前半はあまり記憶にない人生を振り返って自分史を作ることや、他人まで借り出して「自分を分析する」ことが、キャリア意識を育てることにつながるか? これは、いささか疑問です。
しかし、キャリアカウンセラーなどは、「この仕事が好きだという強い思いが内定につながる」とアドバイスをしました。若い世代に影響力のある、いわゆる“成功者”たち(何を持って成功者と言うのか、いま一つ分からないのだが)も、「好きなことを仕事にしなさい!」「好きな仕事なら寝ないでも取り組める」とけしかけました。
実際、34歳までの若者を対象にした調査結果で、「適職探しへの再挑戦を希望している」若年者の総数は、1987年には425万人だったのが、2004年は558万人と、31.4%も増加。これは在学者を除く若年者全体の22.9%に相当します(2006年版「国民生活白書」)。
むろん、好きなことを仕事できたり、自分の強みを生かした方が楽しい。「好きな仕事を探しましょう!」と若者に教えるのは、正論かもしません。しかし、誰もが好きな仕事、やりたい仕事がみつけられるわけでもない。むしろ、「好きな仕事じゃないと、仕事は苦痛」というイメージだけが助長され、「好きな仕事が見つからないから、内定が取れない」と悩む学生も少なくありませんでした。
以前、筆者がある大学の講義で、「好きな仕事、やりたい仕事なんて、そんなにすぐ見つかるものじゃない。実際に仕事をする中で、出会うことの方が多い」という話をしたら、レポートに「すごく納得した」「安心した」「バイトでもそうだった」「やりたい仕事が見つからない私はダメな人間なんだと思ってたので、先生ありがとう」と書く学生の多さに驚いたほどです。
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