どちらの評価が高い? ノー残業デーに残業して目標達成率120% VS 定時退社で達成率100%:3つのポイントから解説(2/2 ページ)
働き方改革に伴い「ノー残業デー」を導入する企業が増えてきた。ノー残業デーにもかかわらず、仕事をしている社員もまだいると聞く。ノー残業デーに仕事をして目標達成率120%の社員と定時退社で達成率100%の社員はどちらより高く評価されるのだろうか? 人事評価に関する3つのポイントから解説する。
社員AとB、どちらが高い評価を得られるの?
社員Aと社員Bについて、どちらが高い評価となるかはその企業の方針、つまり前述した3つの「人事評価をするに当たって考慮する前提事項」に大きく影響を受けると思います。「会社の経営状況」「働き方改革」「成果主義」の3つの事項をもとに、考え方を整理してみましょう。
(1)会社の経営状況の視点
・社員A
120%の目標を達成したものの、会社のルールを破ってノー残業デーに残業をした社員Aに対し、会社は残業代を支払う義務があります。120%の20%の部分が、残業代を上回る売上高や利益を生み出す場合は、プラスの評価に値すると考えられます。しかし、個人目標達成の範囲であり、会社業績への貢献が低く、残業代の負担の方が大きいような場合はマイナスの評価となるでしょう。
・社員B
ノー残業デーのルールを順守しているので残業代の発生はありません。個人目標100%達成ですから、会社の評価基準にもとづいて判断されることになります。
・AとBの比較
両者の比較では、社員Aのプラス20%の成果が残業代を上回るような高業績であればAの方が高く評価されるでしょう。しかし、120%の目標を達成したにもかかわらず予定外の人件費を増加させた場合、所定内労働時間で目標を達成したBの方が優れていると判断されます。
(2)働き方改革の視点
・社員A
労働生産性の視点からみると、残業の程度がポイントになります。目標達成120%のために要した労働時間が所定労働時間の130%相当であったとき、労働生産性はマイナスになります。逆に110%の労働時間であれば、労働生産性はプラスになります。
・社員B
所定労働時間内で仕事を終えて、100%の目標を達成しています。残業前提の時代に比べると、労働生産性の高い例といえます。
・AとBの比較
社員Aの労働生産性がマイナスのときは、Bの方が評価は高く、逆にプラスの場合はAの方が高く評価されるものと考えられます。両者の労働生産が同じ場合はどうでしょうか。同じ評価とする場合もあると考えられますが、そもそも所定労働時間内で一定の仕事を遂行することを目指している働き方改革の趣旨からすると、AよりもBの方が高い評価を受ける可能性があります。
(3)成果主義の視点
・社員A
明らかにプラスの成果を出していますので、成果主義を採用している企業では、非常に高く評価されるでしょう。
・社員B
100%目標達成ですので、会社の評価基準に基づいて判断されることになります。
・AとBの比較
成果主義を重視する企業では、問題なく社員Aの方が高く評価されると考えます。
社員Aと社員Bのどちらを高く評価するか。さまざまな評価の視点を追加して多角的に判断する必要があります。その際、会社の方針、文化、価値観が反映されます。したがって、結論は1つとは限りません。上記の3つの視点を参考にして、それぞれの会社で検討することが望ましいでしょう。
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