土屋鞄が「キノコから作るランドセル」に挑戦するワケ:老舗企業の意外な取り組み(2/2 ページ)
ランドセルやビジネスカバンなどで知られる土屋鞄製造所が、“キノコの菌糸体から作る”商品にチャレンジしている。1965年創業、老舗の革製品ブランドがなぜ、キノコから作る商品に挑むのか? 話を聞いた。
「キノコの菌糸体」が優れている理由
その点、キノコの菌糸体から作る素材の「Mylo」は、生産環境も地球に優しく、安定した供給が見込めるのだという。
素材に使うキノコの菌糸体は、100%再生可能なエネルギーで稼働する、最先端の垂直農法施設で生育される。同担当者は「生育に必要なものは、水と空気とマルチング材(生育時に培地の表面を覆うもの)のみ。2週間足らずの短い周期で生育できます」と期待を話す。
今回の製品開発については「菌糸体の微細な繊維で、柔らかな手触りと上質感のある風合いを実現しました」とし、素材として申し分ないことを説明する。
ただし、苦労した点もあった。同担当者は「まだまだ発展途上であり、Myloの加工方法についての最適解を探り出すことに苦労しました。なじみ深い革とはまた違った特性があり、同じ仕様で作れず具体的にはロゴの刻印や接着剤を用いた組み立てといった工程において、牛革と同じ処理をすればいい訳ではないため、Myloにおける最適な処理を見出すための努力が必要でした」と話す。
同社は、定番商品である「ハンディLファスナー」をこの素材で仕立てた商品の年内発売を目指す(販売価格は未定)。また、6月9〜30日には「土屋鞄製作所 渋谷店」でのプロトタイプ製品の展示を行う。こうした取り組みによりお客からのフィードバックを受けながら、その他の商品についても開発を進めていく予定だ。
【編集履歴:2022年6月8日午前1時40分 公開時「土屋鞄製造所」の社名表記に誤記があったため、修正いたしました。お詫びして訂正いたします。】
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