「子育てと仕事の板挟み」だった隠れイクメンの末路──30代男性が苦しむ元凶:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/5 ページ)
若い世代では共働き世帯が多く、男性も家事や育児をするのが「当たり前」だが、上司にとっては「当たり前ではない」。そんな板挟みで、苦しむ30代男性が少なくない。なぜ、このような事態が起きるのか。当事者のインタビューを紹介しながら、「ちっとも変わらない」男性の働き方について解説する。
今、一番つらいのは30代の男性では? というTwitterの投稿が先日、話題になりました。
家事して、育児して、働いて……「女性は偉いね」と褒めてくれる“おじさん会社員”はいるけど、今は、男性も家事して育児して仕事する時代だ、と。夫婦間では当たり前のことが、上司部下間では「当たり前にならない」。
なにせ、上司たちがひきずっているのは昭和の価値観です。
以下の図の通り、1999年を境に共働き夫婦世帯が専業主婦世帯を上回るようになり、その差は拡大し続けています。好きか嫌いか、やりたいかやりたくないかにかかわらず、夫婦で育児・家事を折半するのが当たり前。しかし、多くの上司にはその当たり前が分からない。そこで、冒頭のTweetに多くの人たちが共感したのです。
“隠れイクメン”だった50代男性のこれまで
これまで私は何人かの“隠れイクメン”の声を聞いてきました。彼らは今、50代。そう、隠れイクメンとは、自分が育児と家事をしていることを、上司や会社にいうこともできなかった人たちです。金融関係の会社に勤める鈴木さん(仮名、53歳)もその1人でした。
「僕の実家は商売をやっていて、母が仕事も家事も子育てもする姿をずっと見ていたので、女性から子育ての負担を減らさないとフェアじゃないなぁって考えるようになりました。
妻は銀行員で朝が早くて帰りが遅い。子どもを保育園に預けるのも迎えにいくのも、僕の仕事でした。家に子どもを残して会社に戻るなんてこともあったし、もう20年前ですからいい意味でも悪い意味でも目立つ。ずいぶんと肩身の狭い思いもしましたよ。子どもに『リストラってなぁに?』って聞かれたときには、笑うに笑えませんでした 」
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