トヨタが仕掛ける 次世代パワートレインの「全方位」戦略:カーボンニュートラルを見据え(2/5 ページ)
トヨタ自動車は現在、プリウスに代表されるハイブリッド車などを販売している。これから本格化するカーボンニュートラル(CN)の時代を見据え、BEVのみならず、水素エンジン車などを全方位で準備している。CNという山の登り方はさまざまだ。
ルールメイキングする欧州企業
自動車産業調査会社マークラインズ(東京都千代田区)の調査によれば、日本で製造される自動車は、コロナ前の19年には約922万台。その半分の460万台が海外に輸出されたものだ。自動車の製造品出荷額は70兆円で、製造業全体の2割を占める。自動車の貿易黒字額は15兆円。日本の資源輸入額が16兆円だから、自動車業界が、そのほとんどを稼いでいる計算だ。
EVにシフトしていくことは、コモディティ化の余地が大きい。技術のすり合わせがなくなり、部品点数の3〜4割が減るといわれているからだ。すると現在550万人いる自動車業界で働く人のうち100万人の雇用が失われる可能性がある。つまり自動車産業が転べば、日本にとって大きな収入源を失うことになるのだ。では世界でEVは、どのくらい普及しているのか。
「これからのポストICE(内燃機関搭載車)はBEV」と宣言している中国、米国、ドイツ。ICEの割合は、それぞれ91%、94%、79%と高い。BEVは4%、2%、6%だ。逆に言えばBEVの一本足打法に思い切ってシフトできるともいえる。一方で日本は、ICEが66%、BEVが1%、HEVが32%だ。
欧州はHEVもディーゼルも諦め、国レベルでEVにシフトすると腹をくくった。彼らにとってはポストICEの議論は終わっているのだ。投資家にはCNに取り組んでいる企業は、永続的に成長するという考えが支配的になってきている。その考えに、これまで「トヨタは乗り遅れている」と、みられていた状況があった。
トヨタには、その潮流に引っ張られている感覚はあるのかもしれない。または、欧州は自分たちの強みを生かしたルールメイキングをし、「CN戦争」を仕掛けてきている感覚があるのだろう。
だが、このCN戦争の構図が、そっくりそのまま日本や米中に当てはまるかは定かではない。トヨタがグローバルの潮流に対して、後手を踏んでいるかというと、決してそうは言えないのだ。
関連記事
- トヨタ自動車がソフトウェアエンジニアの採用を強化する理由 キャリア採用増やし、働き方や風土を変えていく
トヨタ自動車がソフトウェアエンジニアの採用を強化している。キャリア採用に注力して、今後1年間で現在の数百人規模から倍に近いレベルにまで増員する計画だ。狙いをトヨタの人事部に聞いた。 - 「この企業に勤める人と結婚したい」ランキング トヨタ自動車、任天堂をおさえての1位は?
「この企業に勤める人と結婚したいランキング調査」。1位は「地方公務員」(28.6%)だった。 - トヨタグループの「アイシン」が美容商品を手掛けた理由 都内有名サロン6店舗とコラボ
大手自動車部品メーカーのアイシンが、美容業界に身を乗り出そうとしている。同社は空気中の水分子を目に見えないほど小さな水粒子に変換し、髪の内部と地肌に届ける装置「Hydraid(ハイドレイド)」を開発した。都内有名サロン6店舗と協働し、実証実験を兼ねた施術体験機会を3月から用意する。 - 「希望退職を募集することになったら、私はJALを辞めます」 日本航空・菊山英樹専務
コロナ禍による国際、国内の旅客数減少が長期化して日本航空(JAL)は苦しい経営が続いている。経営破綻後に当時の稲盛和夫会長(現在は名誉顧問)から経営のやり方を巡って叱責された経験がある菊山英樹専務にインタビューした。 - 上場企業の「想定時給」ランキング、3位三井物産、2位三菱商事 8000円超えで「ぶっちぎり1位」になったのは?
上場企業の「想定時給」ランキング……。3位三井物産、2位三菱商事に続き「ぶっちぎり1位」になったのは? - 「年商1億円企業の社長」の給料はどれくらい?
「年商1億円企業」の社長はどのくらいの給料をもらっているのか? - リニアを阻む静岡県が知られたくない「田代ダム」の不都合な真実
静岡県が大井川の減水問題などを理由に、リニア中央新幹線の建設工事に「待った」をかけ続ける一方で、「黙して語らない」大量の水がある。静岡県の地元マスコミも触れられない「田代ダム」の不都合な真実を追った――。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.