トヨタが仕掛ける 次世代パワートレインの「全方位」戦略:カーボンニュートラルを見据え(3/5 ページ)
トヨタ自動車は現在、プリウスに代表されるハイブリッド車などを販売している。これから本格化するカーボンニュートラル(CN)の時代を見据え、BEVのみならず、水素エンジン車などを全方位で準備している。CNという山の登り方はさまざまだ。
CNという山の登り方はさまざま
問題は、自動車業界としてCNをいかにして達成するのかにある。こういった状況下でのトヨタの答えは、HEV、PHEV(プラグイン・ハイブリッド)、BEV、FCEV(燃料電池車)といった電動車のほか、FFV(フレックス燃料車)、水素エンジン車など「全方位」で実行する戦略だ。
電動車は30年に800万台を販売するとの目標を打ち出した。特にBEVについては350万台、レクサスは100万台(北米、欧州、中国は100%EV)を販売する見通しを示している。
「全方位」は資本力のあるトヨタだからこそできる戦略でもある。それを進める理由についてトヨタの広報は、「正解がない不確実な時代に対して、多様な解決策で臨みたい」と話す。
テレビCMで豊田章男社長は「全部本気です。どの選択肢であろうと、われわれは一生懸命やっています」と語っている。トヨタ広報は「あらゆる手を使ってカーボンを減らします。その先に、EVによってCO2をゼロにしていける時がくれば、しっかりとシフトしていきます」と話す。
ウクライナ情勢で、CNの流れがスローダウンする可能性も出てきている。だからこそ、全方位戦略が生きてくるのだ。筆者の主観だが、世間、メディア、投資家から「BEVに後ろ向き」と見られていたトヨタのイメージをひっくり返したい思いが強かったと推察している。
全方位戦略を推進するということは、顧客の購入できる車の選択肢を広げることにもつながる。それを実現するためのパートナーシップづくりにも積極的だ。
トヨタは福岡市、大林組、川崎重工など24の自治体・企業などと手を組んだ。昔あった「VHSとベータマックスのデファクトスタンダード戦争(ビデオ戦争)」では、最終的に巻き込み力の差で決着がついた面がある。
トヨタはそれを「CNという山の登り方はさまざま」と表現している。今後さらに多くの協力者や仲間を巻き込むことによって、全方位戦略を進めていくのだろう。
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