「スイッチ買ったばかりなのに、もう次のハードが出るの?」 任天堂を悩ます次世代機の投入タイミング:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(1/7 ページ)
4回に渡りゲーム企業の決算を取り上げて、日本のゲーム業界の現状と今後について考えていきます。今回取り上げるのは任天堂です。もちろんご存じの通りで「ニンテンドースイッチ(Nintendo Switch)」などのハードも製作していますし、「スーパーマリオ」や「どうぶつの森」などのソフトも製作している日本を代表するゲーム企業です。
決算書といえば投資やビジネス視点で見るイメージがあると思いますが、より一次情報に近い経済ニュースでもあります。「決算書で分かる日本経済」ということで、4回に渡りゲーム企業の決算を取り上げて、日本のゲーム業界の現状と今後について考えていきましょう。
- リアルマネートレードを収益化? スクエニがブロックチェーンゲームの本命といわれるワケ
- 4年間で15%→36%に カプコンの営業利益率はなぜ急上昇したのか
- 「スイッチ買ったばかりなのに、もう次のハードが出るの?」 任天堂を悩ます次世代機の投入タイミング
- モンスト脱却目指すミクシィ、ゲームの次が公営ギャンブルとスポーツ事業なワケ
今回取り上げるのは任天堂です。ご存じの通り「ニンテンドースイッチ(Nintendo Switch)」などのハードウェアも製作していますし、「スーパーマリオ」や「どうぶつの森」などのソフトも製作している日本を代表するゲーム企業です。
ハード売上比率50%、海外比率80%
まずは任天堂がどのような企業なのか確認していきましょう。
任天堂が特徴的なのは、やはりスイッチなどのハードを作っているところです。売上比率ではハード比率が50%前後となっています。
また、海外比率は80%弱で推移していて、日本よりも圧倒的に海外の売り上げの方が大きくなっています。
そしてもう1つ特徴的な点としては、スイッチ向けなどのソフトの大半を自社で作っていることにあります。直近の22年3月期では、自社ソフト比率は78.8%に達しています。例えばソニーのプレイステーションでは、自社ソフトの比率は20%ほどのようですから、大きな違いがあります。
また、こうしたハードを提供している企業にとってはサブスクリプションによる収益も重要になってきています。オンラインプレイが今のゲームの魅力で、そのオンラインでプレイするためにサブスクリプションに加入する形になっているからです。
任天堂でも「Nintendo Switch Online」というサービスを展開していて、21年11月時点で利用者は3200万人を突破しています。料金体系は月間300円ほどとなっていて、比較的安い料金設定です。任天堂の商品は比較的年齢層が低めの利用者も多いですから、そういった中でサブスクに関しても料金設定を控えめにしているのでしょう。
ゲーム企業はヒット作が出るかどうかに業績は影響を受けやすいのですが、こうしたサブスクによる安定した収益源を得られるようになっているのはやはり強みです。
また、任天堂のソフトにおけるデジタル比率は40%強となっています。これまで取り上げたカプコンやスクエニでは8割〜9割くらいがデジタルだったことを考えると非常に低い水準となっています。
スイッチではダウンロードしたソフトを保存するメモリの容量が小さいということもありますが、プレゼント需要も影響しているでしょう。比較的低年齢層のプレーヤーも多いため、例えば両親や祖父母からのプレゼントとしてパッケージソフトを購入するケースも多く、実際に任天堂は年末商戦で売り上げが増加しやすい企業です。そういった中でデジタル比率が低いことが考えられます。
自社でハードも開発していますから、ソフトに関してはロイヤリティーを取られることがないので利益率は高いですが、特に利益率の高いデジタル売り上げが伸びにくいというのは、課題となっていきそうです。
関連記事
- 4年間で15%→36%に カプコンの営業利益率はなぜ急上昇したのか
今回取り上げるのはカプコンです。モンスターハンターやバイオハザードなどの人気ゲームを提供している企業で、家庭用ゲーム機向けのゲームソフトをメインに提供しています。営業利益の推移を見ると、20年3月期は大きく伸びていて右肩上がりで成長を続けています。どうして利益率が伸びていたのでしょうか? - リアルマネートレードを収益化? スクエニがブロックチェーンゲームの本命といわれるワケ
決算書といえば投資やビジネス視点で見るイメージがあると思いますが、より一次情報に近い経済ニュースでもあります。今回取り上げるのは、スクウェア・エニックス・ホールディングス(以下スクエニ)です。ご存じの通り、ドラゴンクエストやファイナルファンタジーで知られている企業です。 - サイゼリヤがコロナ前をはるかに上回る利益水準になった理由
決算書で分かる日本経済の動向という事で、4回連続で飲食企業4社の決算を取り上げて、日本の飲食企業の現状を見ていきます。今回取り上げるのはサイゼリヤです。もちろんイタリアンのファミリーレストランであるサイゼリヤを運営している企業です。 - コメダ珈琲は、なぜコロナの悪影響をあまり受けなかったのか?
決算書で分かる日本経済の動向ということで、4回連続で飲食企業4社の決算を取り上げて、日本の飲食企業の現状を見ていきます。第3回目として取り上げるのはコメダホールディングスです。もちろんコメダコーヒーの運営をしている企業です。 - マクドナルドのテークアウト/デリバリー成功の要因はどこにあった? 絶好調で時短協力金も辞退
決算書で分かる日本経済の動向ということで、4回連続で飲食企業4社の決算を取り上げて、日本の飲食企業の現状を見ていきます。今回取り上げるのは日本マクドナルドホールディングス、ハンバーガーチェーンのマクドナルドの国内展開をしている企業です。 - 吉野家は、飽和する国内市場でなぜ郊外と女性に目をつけたのか?
今回取り上げるのは吉野家ホールディングスです。牛丼チェーンの吉野家を中心に展開していて、それ以外にも大きなチェーンでははなまるうどんもこの吉野家グループの企業です。最近は本業以外の部分でも話題になることが多い吉野家ですが、今回はそんな吉野家の現状と今後について考えていきましょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.