最低賃金930円、引き上げはあるのか? 「貧しい日本」を脱する最後の砦:岸田政権「1000円以上を目指す」(2/3 ページ)
現在の日本の地域別最低賃金は、全国平均930円だ。米国の半分以下、欧州の約6割という数字だ。岸田政権は「1000円以上を目指す」と声明を出しているものの、実際にいくらに引き上げられるのだろうか?
28円アップには明確な根拠がある
「1500円程度」という金額の根拠を示す前に、いくつか背景情報を紹介したいと思う。まずは28円という半端な引き上げ額についてだ。背景には、20年に改正された「同一労働同一賃金」の施行がある。同一労働同一賃金の対象は、基本給や手当だけではなく、昇給も該当する。つまり、正社員の賃金を昇給したのであれば、非正規社員に対しても同じ昇給をしなければならないのだ。
日本労働組合総連合会の発表によると、21年全体の正社員の平均昇給額は5180円、従業員300人未満の企業平均は4288円であった。平均は約4500円となる。そこで同一労働同一賃金の対象となる昇給を4500円と仮定してみる。これは月給制であるので、1カ月の平均労働時間を160時間として時給に換算すると、28.125円/時(4500円÷160時間)となる。
【注釈:平均昇給額は5180円とあるが、こちらは大企業を含む平均となる。同一労働同一賃金における「均衡待遇」を適用し、中小企業の現状を加味した昇給額を計算。平均を約4500円と算出した】
つまり、月給制の4500円の昇給は、時給28円のアップにほぼ等しい。したがって正社員が4500円程度を昇給させるのであれば、最低賃金は28円程度アップすることになり、その程度の昇給が毎年行われることが予想される。
最低賃金930円の生活とは
時給930円の賃金で生活する人たちの生活水準を想像してみよう。これを月給に換算すると、14万8800円(930円×160時間)となる。年収換算では、178万5600円(14万8800円×12カ月)だ。
つまり年収200万円を下回り、標準生計費を下回る水準で生活をしていることになる。実はこのような賃金水準で生活している人は少なくない。国税庁が発表した20年の「給与実態統計調査」によると、非正規社員の平均年収は179万円だった。この値は、上述した最低賃金フルタイムの年収と一致する。そして注目すべきことは、全労働者の37.8%が非正規社員であることだ(19年の労働力調査を元に算出)。
図に示すように全労働人口の4割弱が年収200万円を下回り、最低賃金の水準で生活している。それが今の日本なのである。ちなみに正社員の平均年収は496万円であった。
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