優秀な人を欲しがる現場、見つけられずに悩む人事──「中途採用の壁」を壊すため、何をしたのか:狙うは引く手あまたのDX人材(3/4 ページ)
DX人材の採用に注力し始めても、部門の要求が高く、マッチする人材がそもそも見つからなかった東洋エンジニアリング。開始から「半年間、成果なし」だった市場価値の高い人材の採用を、どのようにして軌道に乗せたのか。取り組みを聞いた。
メールの向こうにいるのが“人”であると意識する
同社では常時40以上の職種で採用を行っており、しかも部門から求められる要件が高いため人事部は人材探しだけでも消耗しがちだったが、その苦労を開示し、情報を共有し、部門を巻き込むことで成功を収めてきた。
ダイレクトリクルーティングの手法を確立するまでの試行錯誤は、それだけではない。特に、最初の接点であるスカウトメールの文面に工夫をこらしたという。
「採用人材の数が多いと、どうしても“人”ではなく“数”と考えてしまいがち」と矢島氏は指摘する。「でも、相手は人です。『あなたのプロフィールをよく読んだ上で送っています』ということを理解してもらえるような文面になるよう心掛けています」
「新規事業を手掛けられる人材やDXに強い人材は、欲しがられる存在です。そのような人たちに東洋エンジニアリングを選んでもらうためには、限られた文章量の中で、当社の強みついて知ってもらうこと、また『あなたのプロフィールを見て、きっとマッチすると思っています』と考えていることを知ってもらう内容を盛り込むことにしています」(矢島氏)
また、返信への心理的ハードルを上げないよう、「ざっくばらんに当社の紹介をさせてください。お任せしたいと思っている仕事について説明させてください」と、カジュアルに面談に持ち込めるような工夫も行っている。
スカウトメールへの返信率は10%程度が相場なので、返事が来なくても深追いすることはない。「受け取った人にも仕事の波、ライフスタイルの波があるはずなので、そこへの想像力を働かせています」と矢島氏が説明する。
「だから、すぐに2回目を送ることはありませんが、その人の関わっているプロジェクトか何かが一段落したと思えるタイミング、例えば3カ月後や6カ月後くらいに再送してみて、そこから採用につながったということもありました」(矢島氏)
家族構成も含めた相手の背景に思いをはせ、想像力を働かせて相手の“今”のストーリーを仮説として立て、それに沿ってメールを送る――これは、キャリア採用組だった矢島氏だからこその発想なのかもしれない。
「その人のキャリアについて想像することが、1人目の成功につながったのではないかと考えています」(矢島氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
幹部候補か、“万年ヒラ”か キャリアの分かれ目「30代以降の配置」を、人事はどう決めている?
「育成」の観点から異動配置させる20代が過ぎると、多くの企業は「幹部候補の優秀人材」と「それ以外」の社員を選別します。人事は、そうした異動配置をどのように決めているのでしょうか。年代層別の異動配置のロジックをみていきます。
「優秀でも残念でもない、普通社員」の異動に、人事が関心を持たない──何が起きるのか
社員の異動を考える際、人事部が真っ先に関心を持つのは「優秀社員」と「残念社員」。その間にいる大多数の「普通社員」は後回しにされがちという実態がある。しかし、この層への取り組みを疎かにすると、ある懸念が生まれる。
「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」 両者を分ける“4つのスキル”とは?
日本企業はなぜ、「部下を育てられない管理職」を生み出してしまうのか。「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」を分ける“4つのスキル”とは? 転職市場で求められる優秀な管理職の特徴について解説する。
「優秀だが、差別的な人」が面接に来たら? アマゾン・ジャパン人事が本人に伝える“一言”
多様性を重視するアマゾン・ジャパンの面接に「極めてだが優秀だが、差別的な人」が来た場合、どのような対応を取るのか。人事部の責任者である上田セシリアさんに聞いた。
「売り上げが落ちてもいいから、残業をゼロにせよ。やり方は任せる」 社長の“突然の宣言”に、現場はどうしたのか
「来年度の目標は、残業時間ゼロ」──社長の突然の宣言は、まさに寝耳に水の出来事だった。準備期間は1カ月。取り組み方は、各部門に任せられた。現場はどう対応したのか?
