パワハラを根絶するために知るべき“5つのポイント”:働き方の「今」を知る(1/8 ページ)
パワハラ被害に関するニュースが後を絶たない。どうすればパワハラはなくなるのだろうか? パワハラ被害を未然に防ぐ方法、パワハラが起きてしまった際の対処法などを、ブラック企業アナリストの新田龍氏が5つの項目にまとめて解説する。
パワハラ被害に関するニュースが後を絶たない。もしかしたらあなたが勤めている、もしくは経営している会社にも、パワハラによって多大な精神的、肉体的苦痛を受けている被害者がいるかもしれない。
「当社に限ってそんなことは……」と思うかもしれないが、前回の記事でも説明した通り、パワハラの加害者は無自覚であることが多く、また被害者は声を上げづらい。
この記事では、パワハラが表ざたになった際のリスクや、パワハラ被害を未然に防ぐ方法、パワハラが起きてしまった際の対処法などを5つの項目にまとめた。自社に心当たりがある方もない方も、決して他人ごとと思わずに職場環境を振り返るきっかけとしてもらいたい。
1.パワハラが表沙汰になった際のリスク
もし、被害者が声を上げて自社内でパワハラが発生していたことが判明し、それが公になったら、組織はどのようなリスクにさらされるのだろうか。
1-1.使用者が負う責任
まずは、使用者は法的責任と行政責任を負う可能性がある。
・不法行為責任
使用者は、労働者が職務遂行中に第三者に損害を与えた場合、使用者責任として損害賠償責任を負う(民法715条)。
・債務不履行責任
使用者は労働者の安全に配慮する義務を負っている(労働契約法5条)。パワハラの発生は職場の安全配慮義務に違反したものとして、債務不履行責任(民法415条)を問われる場合がある。
・行政責任
パワハラ防止法にのっとり、事業主が労働局から助言、指導、勧告といった行政指導を受ける可能性がある。
1-2.加害者が負う責任
さらにパワハラ加害者は刑事責任と懲戒リスクを負う。
・刑事責任
加害内容に応じて「傷害罪」(刑法204条)や「暴行罪」(刑法208条)、「脅迫罪」(刑法222条)、「名誉毀損罪」(刑法230条)「侮辱罪」(刑法231条)などが成立する可能性がある。
・懲戒リスク
ハラスメント加害者として、就業規則にのっとって戒告、けん責、訓告、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇などの懲戒処分を受ける可能性がある。少なくとも、組織内で居場所を失うことになりかねない。
関連記事
- 「氷河期の勝ち組」だったのに……40代“エリート課長”に迫る危機
自分をエリートだと信じて疑わなかったサラリーマンが、社内の方針転換により出世のはしごを外されることがある。エリート意識や、能力主義への妄信が生む闇とは──? - 「底辺の職業ランキング」を生んだ日本 なぜ、差別とカスハラに苦しめられるのか
新卒向け就活情報サイトが公開した「底辺の職業ランキング」を挙げる記事が物議を醸している。記事が炎上した一方で、実際に一部の職業の人たちをさげすみ、差別する人がいることも事実だ。日本社会にはびこる差別とカスハラの正体とは──。 - “スーツ姿の客”がネットカフェに急増 カギは「PCなし席」と「レシートの工夫」
コロナ禍で夜間の利用者が激減し、インターネットカフェ業界は大きな打撃を受けた。そんな中、トップシェアを誇る「快活CLUB」では、昼にテレワーク利用客を取り込むことに成功、売り上げを復調させた。そのカギは「PCなし席」と「レシートの工夫」にあるという。どういうことかというと……。 - 格差が広がる日本 週休3日の“貴族”と、休みたくても休めない“労働者”
「週休3日」に注目が集まっている。大企業が相次いでこうした先進的な制度を導入する陰で、休みたくても休めない労働者の存在が置き去りにされている。日本の働き方改革は、どこへ向かうのだろうか──。 - これは立派な社会問題だ――「働かないおじさん問題」と正しく向き合うべき理由
「働かないおじさん」という言葉を目にする機会が増えた。一方で、実際にミドルシニアの問題に悩む企業の話を聞くと、「本人が意図的にサボっている」というサボリーマン的な内容はごくわずかだ。「働かないおじさん問題」はどこから生じているのか、その本質について考察する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.