都心新築オフィス、4割近くが空室に……空室率、リーマンショック時に迫る:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)
毎月、オフィスビルの空室率を公表している三鬼商事によれば、22年6月時点の東京都心5区における平均空室率は6.39%となった。ここ15年では、リーマンショック相場の08年以降に次ぐ空室率の高さが続いている。オフィスビルの空室率や平均賃料の側面から、08年当時との状況を比較しておきたい。
急激な円安・原油高・政策金利の上昇……これらはいずれも2008年9月に発生したリーマンショックの前兆要因だった。
そして、22年はまさにこれらの三要素が発生している年である。ブルームバーグの月次調査によれば、米国経済が向こう一年以内にリセッション(景気後退)入りする確率が47.5%と前月の30%から大幅に上昇しており、それに伴う世界的な波及が懸念されている。
米国経済の停滞はすなわち、日本経済の停滞も意味する。ここで、日本国内の不動産マーケットをみると、これまでは比較的堅調であったはずの都心の賃貸オフィスビルの動向から、リーマンショックのような景気後退相場の再来を示唆するようなデータが見られた。
そこで今回は、オフィスビルの空室率や平均賃料の側面から、08年当時との状況を比較しておきたい。
都心主要部の新築オフィス、4割近くが空室に?
毎月、オフィスビルの空室率を公表している三鬼商事によれば、22年6月時点の東京都心5区における平均空室率は6.39%となった。ここ15年では、リーマンショック相場の08年以降に次ぐ空室率の高さが続いている。
足元ではオフィスビルにおける空室率は横ばい基調となっているものの、コロナ禍によるリモートワークの推進に伴って大きく空室率が上昇した20年から、目立った空室率の低下はみられていない。
直近1年以内に竣工した「新築ビル」区分はより深刻だ。新築のオフィス用貸ビルの空室率は37.66%と、前月比で17.75%ポイントもの大幅な上昇を記録している。
確かに、今月の空室率上昇は稼働率の高い大規模ビルが竣工から1年経過して「既存ビル」に移転したという要因も含まれている。しかし、過去に新築ビル区分の空室率が40%近くまで上昇した例は、リーマンショック前の07年からの15年間で、大きく分けてわずか3回しか発生していなかった。
さらに、コロナ前の数年間は10%以内の低水準で推移していたことも踏まえると、「空室率が低い状態からの急上昇」という類型は、過去15年間ではリーマンショック相場でしか発生していなかった。
コロナ禍による出社制限やリモートワークの推進、そして郊外拠点への移転といった社会的動静によって都心オフィスの需要に陰りがみえているようだ。
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