1日600箱以上売れる「ウイロバー」 ヒットを生んだ老舗・大須ういろの危機感:地域経済の底力(3/4 ページ)
ういろの老舗、大須ういろが2015年に発売したウイロバー。販売初日にいきなり150箱売れて、コロナ直前は年間24万箱まで売れた。今や集客装置となった、この新商品開発の裏側には、「このままでは先がない」という同社の強い危機感があった。
結果を出したことで社員も変わった
商品改革を推進した英里さんは、文字通り、外から会社に乗り込んだわけである。これに対する既存社員からの反発はなかったのか。そのことを問うと、実際に軋轢(あつれき)はあって、こちらの言い分を理解されないことも日常茶飯事だったそうだ。
「いきなりやってきて、ワーワー言うわけだから、当然、何だこの人と思ったでしょうね」と英里さんは苦笑する。けれども、ウイロバーなどの新商品が評判になるという目に見える結果を出したことで、次第に社員の意識が変わっていった。最も議論をしていた工場長も、今では一番の理解者として、新商品開発に前向きに取り組んでくれるようになった。
工場長とのさまざまなやりとりの中で、例えばこんなこともあったと英里さんは明かす。
「ウイロバーが売れすぎて、毎日バーを手差ししていた職人たちが腱鞘(けんしょう)炎になりました。工場長ともけんかしましたよ。『これを作るのは、職人が大変なんだ』と言われたので、『売れないよりいいでしょ』と返すことも」
ストレートに意見をぶつけ合える両者のプロとしての関係性が、このエピソードからもうかがい知れる。
起爆剤となる商品はまだ必要
ウイロバーの成功で勢いがついた同社が、次なる新商品として世に送り出したのが、17年に発売した「ういろモナカ」だ。
「こちらも同じようなターゲット層に向けた商品ですが、モナカにういろと餡(あん)を挟むだけという、決して奇をてらった商品ではありません。だからこそ、デザインは大事だと思いました」
ウイロバーと異なり、製造工程はシンプル。職人たちに負荷をかけずに売れる商品をつくりたいという思いもあった。
ういろモナカを販売したことで、ウイロバーの売り上げが落ちることはなかった。むしろ相乗効果によって双方とも販売数を伸ばした。まだまだ新商品開発は続き、20年12月には小麦粉を使わないグルテンフリーの生ういろ「初(うい)」を発売した。
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