苦しいといわれる第二地銀の実態は? 福島銀行の業績ポイント:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(5/9 ページ)
決算書といえば投資やビジネス視点で見るイメージがあると思いますが、より一次情報に近い経済ニュースでもあります。「決算書で分かる日本経済」ということで、4回連続で地方銀行の決算を取り上げていきます。
株式投資をロスカット
ではどうして21年3月期には有価証券関連の大きな損失が出てしまっていたのでしょうか?
14年からの3月末時点の株式型の投資信託の金額の推移を見てみると
- 2014:4億円
- 2015:127億円
- 2016:172億円
- 2017:145億円
- 2018:141億円
- 2019:212億円
- 2020:99億円
- 2021:0円
- 2022:0円
となっていて14年〜19年3月末までは株式型の投資信託を大きく伸ばしていて、それを20年3月期以降減少させ、21年3月期にはゼロにしています。
アベノミクスによる大規模な金融緩和もあり低金利が続いていましたから、そんな中で貸し出しなどの業務の収益性は悪化し、有価証券運用の軸である債券利回りも悪化していました。
一方で株高が続いていましたから、業績回復のためにも株式への投資での収益拡大を狙っていたことが考えられます。しかし有価証券の含み損益は、19年3月期には15億円のマイナス、20年3月期には新型コロナの影響による株安もあり40億円のマイナスと、投資は裏目に出ました。
21年3月期には株式型の投資信託の残高がゼロになるとともに、有価証券の評価損益は3億円のプラスになっています。株式関連の投資がうまくいかない中で、含み損の株式型の投資信託をロスカットして一時的に大きな赤字を出しました。ちなみに18年3月期も赤字となっていましたが、その際にも有価証券関連の損失が影響していました。
業績の苦しい福島銀行ではリスクを取った投資をする必要が出てしまい、それがあまりうまくいかず、大きな赤字が定期的に出てしまっていたようです。
今は株式型の投資信託の金額はゼロとなっており、こういった一時要因による大幅な赤字転落といった可能性は低くなっています。
関連記事
- 銀行は斜陽産業? 千葉銀行の業績を左右するポイント
決算書といえば投資やビジネス視点で見るイメージがあると思いますが、より一次情報に近い経済ニュースでもあります。「決算書で分かる日本経済」ということで、地方銀行の決算を取り上げていきます。今回取り上げるのは千葉銀行です。 - 「スイッチ買ったばかりなのに、もう次のハードが出るの?」 任天堂を悩ます次世代機の投入タイミング
4回に渡りゲーム企業の決算を取り上げて、日本のゲーム業界の現状と今後について考えていきます。今回取り上げるのは任天堂です。もちろんご存じの通りで「ニンテンドースイッチ(Nintendo Switch)」などのハードも製作していますし、「スーパーマリオ」や「どうぶつの森」などのソフトも製作している日本を代表するゲーム企業です。 - モンスト脱却目指すミクシィ、ゲームの次が公営ギャンブルとスポーツ事業なワケ
今回取り上げるのはミクシィです。もともとは社名の通りでSNSの「mixi」として成長してきた企業ですが、その後は「モンスターストライク」が大ヒットしてモバイルゲームが中心の企業となっています。 - リアルマネートレードを収益化? スクエニがブロックチェーンゲームの本命といわれるワケ
決算書といえば投資やビジネス視点で見るイメージがあると思いますが、より一次情報に近い経済ニュースでもあります。今回取り上げるのは、スクウェア・エニックス・ホールディングス(以下スクエニ)です。ご存じの通り、ドラゴンクエストやファイナルファンタジーで知られている企業です。 - 4年間で15%→36%に カプコンの営業利益率はなぜ急上昇したのか
今回取り上げるのはカプコンです。モンスターハンターやバイオハザードなどの人気ゲームを提供している企業で、家庭用ゲーム機向けのゲームソフトをメインに提供しています。営業利益の推移を見ると、20年3月期は大きく伸びていて右肩上がりで成長を続けています。どうして利益率が伸びていたのでしょうか? - サイゼリヤがコロナ前をはるかに上回る利益水準になった理由
決算書で分かる日本経済の動向という事で、4回連続で飲食企業4社の決算を取り上げて、日本の飲食企業の現状を見ていきます。今回取り上げるのはサイゼリヤです。もちろんイタリアンのファミリーレストランであるサイゼリヤを運営している企業です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.