名古屋の人たちに愛される「ういろ」に 安い土産品からの脱却:地域経済の底力(2/4 ページ)
きしめん、ひつまぶし、味噌煮込みうどんなどとともに、ういろが名古屋名物であることに疑問を持つ人はそういないだろう。名古屋市に本社を構える大須ういろの村山英里副社長は、いかにして同社の意識を変えてきたのか。
職人のこだわりに胸を打たれる
ういろに対する認知や価値の向上が喫緊の課題だった。そのために大須ういろは何をしたのか。ういろについて説明したガイドブックを店頭で配ったり、週末に店舗でポップアップイベントを開き、職人が直接客と対話できる機会を設けたりと、地道な活動を続けている。
若者にアプローチするための新商品も矢継ぎ早に開発する。例えば、「ウイロバー」や「ういろモナカ」は、若い女性が購入し、SNSにアップするようになるなど、一定の手応えを感じている。
そこまでして英里さんがういろの魅力を伝えたいと思ったのには理由がある。企業である以上、ビジネス拡大のためというのはもちろんだが、ういろの品質に対する職人たちのこだわりに胸を打たれたからだ。
「社長が『うちはお米の味を大切にしている』と常々口にしていたので、どんなものかなと思いながら工場へ行きました。ういろの原料は米粉。どうしても米の成分である黒い粒(ヤケ)が入っているものもあります。クレームにつながることもあるため、職人たちはいちいち全部手で取っているのです」
時間はかかるし、当然その分のロスも出る。そこであるとき、真っ白な米粉を取り寄せて、ういろを作ってみたところ、まるで味が違った。
「当社で使っていた米粉の方が大須ういろの味を守ることができるのです。非効率で無駄だと思っていた作業でしたが、これは変えては駄目だと思いました」
真摯にういろ作りに向き合っている姿勢に心を動かされた英里さんは、もっとこの価値を多くの人に広めたいと使命感に駆られた。
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