黒字でも希望退職を募る企業のホンネ──5年後に迫る「深刻な問題」とは:改正高齢法の実情(1/4 ページ)
コロナ禍で希望退職者を募る企業が相次いだ。黒字でも希望退職を募る企業が少なくないのは、なぜなのか? 5年後に迫る「深刻な問題」とは──。
労働人口減少による将来的な人手不足は企業共通の課題だ。だが一方、高齢者雇用を巡ってはコロナ禍の景気停滞もあり、消極的な企業と積極的な企業に二極化している。
希望退職の募集、4割以上は黒字企業に
コロナ禍で希望退職者を募る企業が相次いだ。上場企業の希望退職の募集企業・人数は2020年に93社、1万8635人、22年は84社、1万5892人。2年連続で80社を超え、2年間の募集人数は3万4527人と、リーマン・ショック直後の09〜10年計の3万5173人に迫る水準に達した(東京商工リサーチ調査)。
その中で、コロナ禍の影響などで直近本決算の当期損益が赤字だった企業は56.0%。製造業などを中心に4割以上は黒字企業だった。
さらに22年上半期(1〜6月)に早期・希望退職者を募集した企業は25社であるが、約半数の12社は直近の通期損益が黒字だった。このように近年、黒字企業の人員削減が常態化している。
60歳前の社員に限らず、再雇用者を含む60歳以降の社員も募集対象に加えている企業の存在も散見されている。
黒字なのに人員削減のワケ 約5年後に迫る「深刻な問題」
なぜ、黒字なのに人員削減をするのか。50歳以上の社員を対象に早期退職者募集を実施したサービス業の人事担当役員は次のように話す。
「新規事業を含めた新しい分野に挑戦していく方針を掲げているが、50歳を過ぎた社員の多くは意欲に乏しく、新しい価値を生み出すとは思えない。当社の社員は40代以上が半数を占めるが、4年後には50代以上が30%を占める。今のうちに人口構成を正し、後輩世代に活躍の場を与えるなど新陳代謝を促すことが必要だ。加えて、これまで長く年功的賃金が続いてきたことで50歳以上は非管理職でも賃金が高い。この状態を続けていけば会社の体力が耐えられなくなるという不安もある」
また、広告関連会社の人事部長はこう語る。
「あと5年ぐらいで最大のボリュームゾーンであるバブル入社組が継続雇用に入るが、これはどの企業にとっても深刻な問題だ。当然それが分かっているからメーカーなどを中心に、3つの方法を使って人員を減らしている。1つ目は、実質55歳定年で関連会社に出向させること。2番目は取引先企業などに転籍させる、3番目がセカンドキャリア制度という早期退職制度を設けて『退職金を割増しするので辞めてください』と促すこと。3番目の選択肢は50歳前後にキャリアプラン研修を実施し、年金を含めた老後の生活設計を考えてもらい、独立や転職など社外で活躍する方法や、そのための資金を支援することを説明する。大企業の黒字企業ほど高額な退職割増金を出せる」
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