トヨタのいう「原価低減」とは「値切る話」ではない 部品不足と価格高騰:池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/7 ページ)
自動車メーカー各社は相次ぐ工場の稼働停止に苦しんでいる。まず部品がない。そして原材料からエネルギー、水に至るまであらゆるものが高騰している。相当に苦しい状況である。そんな中、トヨタが言う「原価低減」とはどういうことを意味しているのだろうか?
サプライヤーの本音
他方、クルマの売価について説明することがあるとすれば、トヨタは常々「何をいくらで買うかの決定権はお客様にある」と言い切っている。つまり売値を決めるのはトヨタではない。そこでユーザーに納得してもらえる「もっといいクルマ」を「もっと安く」しようとした結果の積み重ねが利益率につながる。利益率の高い低いはあるかもしれないが、売価そのものに納得するかしないかは、消費者が決めることである
そのあたりをサプライヤーの人たちがどう受け止めているかといえば、トヨタに関しては割と評判がいい。もっとも、これに関しては情報源はtwitterで、Tier1系サプライヤー(一次下請け)と思しき人たちのつぶやきなので、ちゃんとした取材情報とはいえない。本来ならば、こういう正規取材でない話にはあんまり触りたくない。
読者からは、是非サプライヤーにも取材してくれというリクエストがちょくちょくある。お応えしたいのは山々だが、正規にサプライヤーの広報経由で取材するのは多分無理だ。サプライヤーの命運を握っている自動車メーカーに対する批判意見を聞きたいと申し込んだところで、まず受けてもらえないのは想像がつくし、そこでキレイに消毒されたメーカー礼賛の話をされても書くときに困る。かといって、ネットで探して、どこの誰とも分からない匿名のサプライヤーの一社員の恨み節を真に受けて書くのも気が進まない。なので、やむなくこういう手段で参考までと断って書くしかない。
彼らが強く望んでいるのは、正確で早期の生産台数予告である。計画が狂うことを彼らは最も嫌がる。挽回生産でスゴい数量を予告し、ついでに数量をカサに値下げ要求をした挙げ句の減産に、サプライヤーはキレている時がある。そういう時にむしろトヨタはちゃんとしているという話になっている。まあネット上の話なので、その辺に興味がある人は検索して信じるか信じないかは各自で決めてほしい。少なくとも筆者はtwitterを情報源に、これが真実だとまではいわない。あくまでもそんな噂があるという参考程度である。
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