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実は“看板倒れ”でない東証の市場再編:フィデリティ・グローバル・ビュー(2/5 ページ)
“看板倒れ”との声も多い東証の市場再編。しかし、フィデリティが実際にエンゲージメントを進めていると、そうした評価とは異なる印象を受けます。その理由について、ESG専門家のフィデリティ投信の井川智洋が説明します。
女性取締役の増加はプライム市場創設が後押し
とりわけ日本企業がグローバル企業と比べて取り組みの遅れが指摘されるジェンダー多様性についても、一定の進捗が見られました。過去10年間の日本企業の女性取締役比率を見ると、着実に上昇は続けていたもののそのペースは非常に緩やかでした。しかし直近2022年の6月総会を終えた時点では、プライム市場上場企業では史上初めてその比率が10%を超えたようです(図表1)。
フィデリティ投信では、日本企業に対してグローバルスタンダードのサステナビリティ基準を要求していくことが、ひいては企業の中長期的な競争力の向上につながると考えています。その観点から、グローバルでの議決権行使基準見直しに合わせて、日本でも女性取締役が15%に満たない場合、取締役選任議案に反対するとの基準を設け、投資先企業と対話を重ねてきました。
議決権行使基準の改定が施行される2022年6月総会前の段階で、当社投資先企業のうち56社が基準を満たしていませんでした。しかし、6月総会を経て、当該56社のうち半分の企業が初めて女性取締役を選任するという結果となりました。
まだまだ道のり半ばではあるものの、こうした女性取締役選任の動きもプライム市場の創設がきっかけとなったことは確かです。フィデリティ投信では、市場構造改革が企業にとってサステナビリティ課題への取り組みを通じて企業価値向上に取り組むきっかけとなった部分もある、と評価しています。
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