「乗客1000人未満」でローカル線を廃止? 存廃議論「国は積極的に関与すべき」:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(7/9 ページ)
国土交通省が7月25日に「地域の将来と利用者の視点に立ったローカル鉄道の在り方に関する提言」を発表。新聞やテレビなどで「乗客1000人未満のローカル線は存廃論議」と報じられているが、断片的な報道より、原典で真意を読み取ってほしい。
国は一貫して傍観者という構えだ。それは交通政策基本法と、法に準拠してまとめられた「交通政策白書」にも表れている。「鉄道は新幹線と都市輸送、地方は最適な交通手段を検討」という流れ。鉄道需要に見合ったコストではない、という考えだろう。
提言でも「国の主体的な関与が必要な場合もあるが、現在の地域公共交通活性化再生法において国の関与は『必要な助言』にとどまっている」と指摘している。
なお、北海道は事情が異なる。上記の3者で都府県は沿線自治体に含まれるけれど、北海道は国の立場と同じ。JR北海道に対して北海道庁の支援が消極的で、北海道新幹線の並行在来線問題でも道庁は関与せず、JR北海道と沿線自治体に丸投げしている。これは北海道庁が悪いというより、制度に不備がある。北海道は道路を選択するしかない。
なぜなら鉄道と平行する道路は国が「北海道開発予算」で一括して面倒を見てくれるから。令和4年度の北海道開発予算は5702億2800万円。うち道路関係予算は2180億3800万円。総額の約4割だ。
ちなみにJR北海道の22年3月期の区間別収支の合計は790億円の赤字である。道路のぶんをちょっとだけ鉄道に回してもらってもいいじゃないか、と思う。北海道開発予算も国土交通省の管轄だ。建設省と運輸省だった時代からタテワリ行政が続いているのだろうか。
話がそれてしまったけれども、提言にはJR北海道の事情も加味してほしかった。
提言の37ページには、ローカル線再構築における「国の支援の在り方」の「入口段階」として「鉄道特性を評価するため必要な資料、データの分析を実施する費用の支援、実証事業の経費と規制緩和など制度の支援」が書かれている。出口段階には「地域戦略と利用者の視点に立った鉄道の徹底的な活用と競争力の回復」、または「BRT・バス等を導入し、運営経費を削減しつつ、増便、ルート変更、バス停の新設等により鉄道と同等またはそれ以上の利便性を実現していく」とある。
そして決定的な文章はここ。
「国は制度面での支援を行うほか、関係部局の予算を総動員して、再構築に必要な経費を財政面で支援すべきである」。そのために「鉄道運賃に関する協議運賃制度」「鉄道事業者が関与する特定BRT制度の導入」を提言する。
「関係部局の予算を総動員して」に「国が傍観者でいることを許さない」という強い意思を感じる。
提言では国が主体となり、鉄道事業者や自治体からの要請で「特定線区再構築協議会(仮称)」を設置することを提案している(出典:国土交通省、地域の将来と利用者の視点に立ったローカル鉄道の在り方に関する提言)
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