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「乗客1000人未満」でローカル線を廃止? 存廃議論「国は積極的に関与すべき」杉山淳一の「週刊鉄道経済」(8/9 ページ)

国土交通省が7月25日に「地域の将来と利用者の視点に立ったローカル鉄道の在り方に関する提言」を発表。新聞やテレビなどで「乗客1000人未満のローカル線は存廃論議」と報じられているが、断片的な報道より、原典で真意を読み取ってほしい。

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「沿線自治体は逃げないでください」

 提言は末尾の42ページで「国土交通省を中心に、本検討会の提言の内容を実現するために、新たな制度的枠組みの整備や必要な予算等の確保、推進体制の在り方等の検討を本格化していくことを求めたい」とし、国に対して真摯(しんし)な対応を求めるとともに、沿線自治体に対しても「受け身であること」を許さない。

 18ページでは沿線自治体に対して

 JRのローカル線に対し、JRの内部補助によりローカル線区が支えられてきた、という実態があり、沿線自治体が主体的に取り組む対象ではないとの認識が定着しており、地域鉄道、バス等と異なり、これまで多くの沿線自治体にとって財政支援を含め、自分事として捉える対象とはされてこなかった。

 と指摘。また28ページでは

 単なる現状維持ではなく、真に地域の発展に貢献し、利用者から感謝され、利用してもらえる、人口減少時代に相応しい、コンパクトでしなやかな地域公共交通に再構築していくことが必要である。その際には、国・地方自治体・交通事業者が上記の役割分担を踏まえて、協力・協働しながら取り組んでいくことが不可欠である。

 と、鉄道の活用に対する積極的な関与を促している。

 まとめの42ページにはこうある。

 この新たな仕組みは、「ローカル鉄道の存続ありき」が大前提とされ自己目的化するような文脈で活用されてはならない。定住人口や交流人口の増加を通じて、魅力ある、持続可能性の高いまちづくりを実現していく中で、ローカル鉄道、あるいはこれに代わる新たな輸送モードをどう位置づけ、どう生かしていくか、それによってどのように地域モビリティを人口減少時代に合ったものに刷新していくか、各地域の戦略的思考が試されており、まさに「がんばっている地域」を応援する文脈で活用されるべきである。

 「この新たな取り組み」は、提言で「特定線区再構築協議会」と仮称しているものだ。国が積極的に関与し、沿線自治体がまちづくりを含めた乗客増に取り組むなかで、鉄道事業者とともに最適な交通モードを選択するための協議会である。

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