「サイゼリヤで満足=貧しい」のか 残念ながら“事実”であるワケ:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
サイゼリヤ論争が盛り上がっている。『サイゼリヤで満足することは「貧しい」ことなのか?』といったテーマが語られているが、消費者はどのように受け止めているのだろうか。筆者の窪田氏は、一票を投じていて……。
店舗を支える「最低賃金労働」
なぜそんなことが言えるのかというと、サイゼリヤは日本名物「低賃金」を成長エンジンとした、ビジネスモデルの代表格だからだ。そんな低賃金ビジネスのリーダーが「現状維持」を続ければ続けるほど、「安いニッポン」がさらに深刻化する。つまり、諸外国に1人当たりのGDPなどがどんどん追い抜かれて、日本人が貧しくなっていくのだ。
……なんてことを口走ってしまうと、「サイゼリヤは規模を大きくすることで高品質・低価格を実現しているのだ、そんなことも知らないのかこのバカライターめ!」とさっそく論争に巻き込まれてしまいそうなのであらかじめ断っておくと、サイゼリヤの「高品質・低価格」が独自の食材輸入ルートや、自社農園などの「巨大チェーンならではのスケールメリット」の賜物であることにはなんの異論もない。
ただ、そういう「美しいストーリー」だけではないと言いたいのだ。実は同社の「高品質・低価格」は、人件費が低く抑えられている部分も寄与しているのだ。
それがうかがえるのが、全国の店舗を支える「最低賃金労働」だ。
例えば、奈良県の最低賃金(2021年度)は866円で、サイゼリヤ公式サイトで奈良県内の店舗のバイト募集を検索すると56件がヒットして、そのすべての時給は「886円」が下限となっている。
「なんだ、最低賃金よりも20円も高いじゃないか! さすがサイゼリヤ、ホワイト企業じゃないか」と感じる人も多いだろうが、喜ぶのはまだ早い。56件の求人の「給与」には、こんな注釈がつけられている。
研修時給与 時給866円 ★高校生同時給 ※研修期間は100時間迄
つまり、「最低賃金で100時間まで働かせますよ」と言っているのと同じだ。もちろん、店やバイトの事情によって、研修期間が早く終わることもあるだろう。しかし、制度としてちゃんと存在しているということは、フルに100時間使う店も存在することでもある。
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