「サイゼリヤで満足=貧しい」のか 残念ながら“事実”であるワケ:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
サイゼリヤ論争が盛り上がっている。『サイゼリヤで満足することは「貧しい」ことなのか?』といったテーマが語られているが、消費者はどのように受け止めているのだろうか。筆者の窪田氏は、一票を投じていて……。
どんどん「貧しい」状況に
そこに加えて、サイゼリヤをよく利用する方ならば感じるだろうが、同店には「高校生バイト」が非常に多い。自分が初めてバイトをしたときのことを思い出してほしい。とにかく採用をしてくれるだけでもありがたかったので、時給が最低賃金スレスレだとか、研修期間が長いなんてところまで気がまわらなかったのではないか。
そういう「カネのことでゴチャゴチャ文句を言わない低賃金労働者」をサイゼリヤは全国1089店(21年8月期)で大量に使用している。しかも、最初の100時間は地域の最低賃金で使える。この人件費圧縮がスケールメリット的に見ても、サイゼリヤの「高品質・低価格」に影響ゼロとは考えにくいと言いたいのである。
そう聞くと、「外食大手が時給の下限を最低賃金にするのは常識だ! おかしな言いがかりをつけるな」と怒るサイゼリヤファンもいらっしゃると思うが、そんなことはない。
例えば、マクドナルドの公式サイトで奈良店の募集要項を見ると、高校生も一般も「940円以上」とサイゼリヤよりも高くなっている。また、「くら寿司」の公式サイトで奈良県内の店舗を調べてみると、高校生の時給はやはり「950円以上」(大和高田店)、「930円以上」(天理店)とサイゼリヤよりも高い。くら寿司も研修期間は「866円」と最低賃金だが、その期間は「50時間」とサイゼリヤの半分だ。
誤解なきように言っておくが、これをもってして筆者は「サイゼリヤがブラックバイトだ」などと主張したいわけではない。
多くの日本人は、「高品質・低価格」を実現しているのはスケールメリットだ、企業努力だという「美しいストーリー」にどうしても引っ張られがちだが、現場で働いている労働者の多くが最低賃金スレスレで働いている現実がある以上、低賃金をビジネスモデルに組み込んでいる「醜悪な現実」もちゃんとある――ということを指摘したいだけだ。
つまり、今のサイゼリヤに満足をしているということは、この「醜悪な現実」に満足していることでもある。それは日本人がどんどん「貧しい」状況にのめり込ませていくことに他ならない。
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