現代から戦時中に転生──iPhoneで撮影した戦争ドラマ「セイコグラム」が話題 NHKが“タテ型撮影”にこだわった理由(2/4 ページ)
8月15日に77回目の終戦記念日を迎える中、現代からタイムスリップしたら戦時中の女学生になっていたという設定で戦争の記憶継承を試みるドラマをNHKが制作した。制作の狙いを聞いた。
地上波放映番組をインスタでも無料配信
番組の特徴が、地上波で放送したドラマを、インスタでも無料視聴できる点だ。NHKにとって、インスタでのドラマ配信は、「ロッパグラム 転生したら戦時中の喜劇王だった」(21年12月28日放送)に続く2作品目。同作品でも、セイコグラム同様、若年層に人気の俳優・満島真之介さんが、“昭和の喜劇王”古川ロッパさんに転生したという設定だった。
最近こそ、番組の見逃し配信などネット視聴が一般的になったものの、地上波での番組放送がメインだったテレビ業界で、NHKが行った、番組の本編をインスタで配信する試みは注目を集めた。1作品目の反響があったとして、NHKは2作品目を、戦争ドラマの王道ともいえる終戦記念日に絡めて制作することとした。
放送法などで「公共放送」としての役割が決められているNHKにとって、番組のインスタ放映に問題はないのだろうか。NHK広報は「NHKインターネット活用業務実施基準に基づいて、番組の理解増進情報(番組の周知・ 広報に資する情報や番組内容を解説・補足する情報)の提供と位置付けている」とし、問題はないとの見解を示した。
iPhoneとSONY「FX3」での“タテ型”撮影 スマホ視聴に特化
撮影機材には、iPhoneと、SONYの小型シネマカメラ「FX3」を採用。FX3は、ミラーレス一眼カメラ同等の小型サイズでありながら、業務用のシネマカメラの機能を備えているとして、ガジェット系のYouTuberを中心に、撮影機材として高い支持を集める人気機種だ。フィルターを入れ、撮影することで現実感をなくす工夫も施した。
ドラマの主人公が転生先で、スマホで記録したものという設定のため、iPhoneでの自撮りシーン以外はFX3を縦型に設置して全編を撮影した。近年、スマホで動画を視聴する文化が定着するとともに、縦構図で撮影した動画コンテンツが増加しているためだ。
NHK「クローズアップ現代」では、脳科学実験の結果、縦型動画は「視線が画面の中で散らばらず集中」「脳の血流が活発になる」などの効果があると紹介(5月31日放送)。一例として、家族の日常を投稿するYouTuberが、従来の横構図の動画を縦構図に変更したところ、2600回の再生数が100万回に達したともしていた。
配信先のインスタでも“タテ型視聴”が前提になっている点も決め手となった。NHKは撮影手法について「インスタグラムでの発信ということも考えると、縦型であるのは必然だと考えている」としている。
インスタ投稿では一覧性意識
インスタでの投稿にも、工夫を施した。特に意識したのが、閲覧時の視認性だ。閲覧者が投稿一覧を見た際に、視認性を高められるよう、横一列を全面に使った投稿に注力した。他にも「ドラマ制作の裏側も追体験できるよう、撮影現場のオフショットも入れ、触れやすさ、現代の若年層との『つながり』を意識している」(広報)という。
NHKは番組制作について「戦争の体験について『どうしたら若い人たちに関心をもってもらえるか』と考えたとき、その世代が普段使っているデバイスでタッチポイントを作り、戦争体験に触れてもらうというのが企画の始まりだった」と説明。「自分たちの世代の俳優が転生し、スマホで当時の様子を記録していく、インスタグラムでも見れるということで、若い世代の人にも少しでも『自分事』として感じてもらい、戦争についてもっと知りたい、と思っていただける若い世代が増えることを願っている」と話している。反響次第で、第3弾の制作も検討するという。
インスタでは記事執筆時点(8月14日午後5時時点)で5話分を配信中。地上波では終戦記念日の8月15日、午後11時に放送される予定だ。
関連記事
- ソニーの「着るエアコン」“バカ売れ” 猛暑追い風に「想定以上で推移」
連日の猛暑が続く中、ソニーグループ(ソニーG)が4月に発売した、充電式の冷温デバイス「REON POCKET 3」(レオンポケット3)の売れ行きが好調だ。同製品は「着るエアコン」とも呼ばれており、ビジネスパーソンを中心に売り上げを伸ばしている。 - 「涙が止まらない」──破壊された街の3Dモデルに反響 衛星画像と「フォトグラメトリー」が伝えるウクライナ戦争
ウクライナとロシアの間で勃発した戦争が長期化する中、破壊された街の3Dモデルが公開され、Twitterで話題となっている。取り組みの経緯や狙いを東大教授に聞いた。 - タイガーとサーモスの「炭酸対応ボトル」、猛暑で販売好調 節電ニーズも追い風に
記録的な猛暑が続く中、タイガー魔法瓶とサーモスが販売する、炭酸飲料の持ち運びに対応した魔法瓶の売れ行きが好調だ。販売数が前週比で倍増しているケースもあるという。 - コロナ禍ならでは? Zoffの「薄色レンズ」サングラス、販売好調の理由
メガネブランド「Zoff」(ゾフ)で、レンズの色が薄い「ライトカラー」のサングラス販売が好調だ。理由などを運営元のインターメスティックに聞いた。 - “NHK受信料を支払わなくていいテレビ”を製品化 ドンキの狙いは?
「ドン・キホーテ」が発売した、「ネット動画専用スマートTV」がネット上で大きな話題を呼んでいる。テレビと称しながら、テレビチューナーを搭載していないためだ。製品化の狙いと経緯を聞いた。 - ドンキの“NHK受信料を支払わなくていいテレビ”、売り切れ店舗続出 2月中旬から再販へ
「ドン・キホーテ」が2021年12月に発売した「ネット動画専用スマートTV」を2月中旬に再販すると、運営元が明らかにした。初回生産分6000台を各店舗で販売していたが、売り切れになる店舗が続出。6000台の追加生産に踏み切っていた。 - ダイキンが推奨するエアコンの風向きは? 節電のコツは「温度ムラの抑制」
猛暑が続き、政府が企業などに節電を要請する中、ダイキン工業が「電気代を抑えながら 快適に過ごすエアコンの上手な使い方」と称し、エアコンの節電方法をPRしている。 - “ナメクジ事件”で話題の「大阪王将」への保健所検査、抜き打ちじゃなかった 理由は?
中華料理チェーン店「大阪王将 仙台中田店」で「ナメクジが発生している」とSNS上に書き込まれたことを巡り、仙台市保健所が店舗側に事前に連絡した上で立ち入り検査をしていたことが分かった。 - テレビ朝日、家庭の電力使用量グラフから「テレビ」削除で物議 「丁寧さに欠けていた」
テレビ朝日が家庭の電力使用量に関するグラフを加工して番組で紹介したとして物議を呼んでいる。Twitterで拡散されている画像によると、番組ではグラフから「テレビ・DVD」の使用分(8.2%)をカットして放送していた。Twitterでは「捏造だ」「悪質すぎる」などの声が挙がっている。 - 野村総研、「テレビ消せばエアコンの1.7倍の節電効果」レポートに注意喚起 「11年前とは家電の性能が異なる」
野村総合研究所(野村総研)が11年前にまとめた「テレビ消せばエアコンの1.7倍の節電効果」と記載したレポート内容がTwitterで注目を集めている。これに対し野村総研は「当時と今では家電の性能が異なる。参考程度にとどめてほしい」と注意を呼び掛けている。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.