ゲームは「無料」から「稼ぐ」時代へ Play to Earnゲーム台頭の裏側(後編)(4/5 ページ)
日本を代表するゲーム会社がこぞって、Play to Earnゲームに注目している。Play to Earnゲームとは、プレイすることで稼げるゲームのことだ。Play to Earnゲーム台頭の背景は、立脚するブロックチェーンまわりの動向も複合的に絡むものである。Play to Earnゲームの実例に触れながらその背景を探ってみたい。
国内事業者の事業運営上の課題
一方で、国内ではまだ遍く普及しているとはいえないPlay to Earnゲームには、どのような事業運営上の課題があるのだろうか。ここでは大枠として、社会的なルール面での課題と、業界的なUI/UXの課題、事業者の体制面の課題の3つに分けて整理する。
社会的なルールに関して、Play to Earnゲームで用いられる暗号資産やNFTはまだ新しいものであり、その取り扱いがクリアになっていない。この点、Play to Earnゲームを注視する事業者の検討課題に挙がることがある。
ルールの策定については、岸田政権が「Web3」を成長戦略の柱に挙げ、6月7日に閣議決定された「骨太の方針」に「ブロックチェーン技術を基盤とするNFTやDAOの利用等のWeb3.0の推進に向けた環境整備の検討を進める」と明記したり、7月15日には経済産業省 大臣官房にWeb3.0政策推進室が設置される等動きは活発になっている。ただ、それを推進するための税制、賭博該当性などに係る法制、会計基準などの環境構築がPlay to Earnゲームを取り巻く事業発展に追いついていない。
UI/UXの課題として、Play to Earnゲームは一般の人にはあまり馴染みがないと思われるメタマスクなどの仮想通貨ウォレットが必要な点が挙げられる。また言語的に英語サービスが中心であり、まだマスに広まるにあたってのユーザビリティが優れているとはいえない状況である。
もちろん、Play to Earnゲームがこれまで形作ってきたコミュニティやエコシステム構築の良い面を崩すべきではないものの、例えばAAAタイトルのゲームを既にコンソールゲームやオンラインゲームの領域で世に送り出しているゲームパブリッシャーやゲームデベロッパーがPlay to Earn領域に進出するような場合は、既存のコアなファンのゲーム像とのバランスには留意しなくてはならない。
米国のブリザード・エンターテイメントが提供していた「ディアブロ III」で、12年米ドルとペッグされたゲーム内通貨を使いアイテム売買が可能になった時の、ハクスラゲー(Hack and Slash、戦闘中心ゲーム)としては想定外のプレイヤーの売買行動やエコシステムの崩壊を思い出す方もいるかもしれない。
最後に事業者の体制面の課題がある。暗号資産やNFTにかかわるPlay to Earnゲームの事業者にとって、統制面・セキュリティの要件を満たしながら、効率的なオペレーションを実現する難易度は高い。暗号資産やNFTについて、送金権限、送金承認権限、権限管理権限の牽制関係を持った上で、保管や円転に伴う統制面をどう構築するか検討する必要がある。
自社保管の場合はセキュリティの問題もあり、セキュリティを勘案したパブリックなアセットの保管ノウハウも必要である。また暗号資産やNFTの保管管理の際に、業界ならではのハードウェアウォレットなどのツールにも習熟する必要があり、社内の別部署への管理面の説明含めて一から行う場合はハードルもあると思われる。
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