「近畿のオマケ」和歌山行きの飛行機に、なぜ客が増えているのか:「旅の満足度」が1位(2/4 ページ)
いま、和歌山県に熱い視線が注がれている。白浜町の南紀白浜空港は今年4月以降、搭乗客数が4カ月続けて月別の過去最多を更新。旅行専門誌「じゃらん」が7月に発表した宿泊旅行調査の「都道府県魅力度ランキング」では、北海道や沖縄を抑え総合満足度1位に輝いた。県民自ら「近畿のオマケ」と卑下するなど、影の薄さが目立ってきた和歌山県。一体何が起きているのか。
人口増が見込めない中、県は「定住人口」ではなく、地域に継続的に関わる人を指す「関係人口」を増やすことに着目。2001年度からIT企業誘致に力を入れ、15年にセールスフォース、16年にNECが白浜町に相次いでサテライトオフィスを開設した。22年3月末現在、都市部のIT企業を中心に、白浜町や和歌山市などに合計35社がサテライトオフィスを開設している。
県はIT企業の誘致に加え、Wi-Fiの整備も推進。人口当たりの整備数は全国2位(2018年調査)という充実ぶりだ。ワーケーションに適した土台を着々と築き上げてきた結果、17〜21年度の5年間で、159社1373人が県内でワーケーションを体験したという。
顔認証で「手ぶら決済」 日本初の民間ロケット発射も
搭乗客が増えた要因はほかにもある。IT企業の誘致により、地域には新たな変革がもたらされた。16年にサテライトオフィスを開設したNECは、南紀白浜エアポートと連携し、19年から顔認証技術を用いた「IoTおもてなしサービス実証」を開始した。
事前に顔情報やクレジットカード情報を登録することで、現金やカードを使わずに、機器に顔をかざすだけでホテルやテーマパーク、飲食店などで「手ぶら決済」ができるようにした。これまでに顔認証サービスを導入しているのは13施設に上り、複数の施設が共同で導入するのは国内初だ。こうした先端事例に学ぼうと、19年以降、全国から100件以上の視察が訪れているという。
このほか、県南部の本州最南端に位置する串本町では現在、宇宙輸送サービス「スペースワン」(東京都港区)による日本初の民間ロケット発射場の整備が進んでおり、最初の打ち上げを年末までに予定している。こうした新プロジェクトの企業関係者らも頻繁に訪れている。
ビジネス目的の搭乗客が増えていることを踏まえ、県は定期便の機材を大型化した。それまでは95席の「エンブラエル190」だったものを、19年10月以降、165席ある「ボーイング737―800」に変更。現在は東京・羽田間を1日3往復するが、今後、4往復に増便する計画も立てており、実証実験に向けて調整を進めている。
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