ZOZO最古参の役員が語る「前澤氏の退任」と「ZHD提携」、激動の裏側:対談企画「CFOの意思」(1/3 ページ)
「CFOの意思」第3回の対談相手は、ZOZOで取締役副社長兼CFOを務める柳澤孝旨氏(「やなぎ」は、正しくは木へんに「夕卩」)。創業社長・前澤氏の退任とZホールディングスとの提携という激動の裏側とは。後任社長に澤田氏が決定した際、自身も「辞められなくなった」と感じたというが、その真意とは?
連載:対談企画「CFOの意思」
ベンチャーの成長のカギを握る存在、CFO(最高財務責任者)。この連載では、上場後のスタートアップの資金調達や成長支援を行うグロース・キャピタルの嶺井政人CEOが、現在活躍するCFOと対談。キャリアの壁の乗り越え方や、CFOに求められることを探る。
「CFOの意思」第3回の対談相手は、ZOZOで取締役副社長兼CFOを務める柳澤孝旨氏(「やなぎ」は、正しくは木へんに「夕卩」)。創業社長・前澤友作氏の退任とZホールディングスとの提携という激動の裏側とは。後任社長に澤田宏太郎氏が決定した際、自身も「辞められなくなった」と感じたというが、その真意とは?
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前澤氏退任、Zホールディングスとの提携──激動を振り返って
嶺井政人CEO(以下、嶺井氏): ZOZO社の近年の非常に大きな動きとして、2019年に創業社長の前澤さんの退任とZホールディングスとの提携がありました。
柳澤孝旨CFO(以下、柳澤氏): 前澤の退任は、Zホールディングスとの提携交渉の過程で決まったことでした。
まず、Zホールディングスとの提携について。私たちが当時持っていた経営課題であり戦略がマスマーケットの獲得でした。Zホールディングスとの提携は、その戦略にピッタリと合致するもの。提携することで多くのユーザーにリーチできる。ならば成就させなければという方向で話が進んでいきました。
その後、どのような体制にするかという話し合いがなされました。株を全部売るのか、傘下に入るのか。Zホールディングス側と話し、決定は大株主でもある前澤に委ねられました。
嶺井氏: それはどんなタイミングだったのでしょうか。
柳澤氏: 後任の決定まで含めるとギリギリのタイミングで、数週間程前に前澤退任の決断が下されました。それからは「後任を早く決めてください」と前澤をせっつく日々で、プレスリリースを出す1週間前に「澤田にする」と前澤が決定。後任の社長となった澤田にとっては検討する時間がない、という(笑)。
嶺井氏: スピーディーに事が進んだんですね(笑)。前澤さんが退任を決意されたことを聞いたとき、どう思われましたか。
柳澤氏: 周りはどうか分かりませんが、私にとっては意外なことだとは感じませんでした。彼の性格、美学の点からもきっぱり抜けるのではないかなと考えていたので。
嶺井氏: 澤田さんが選ばれたときの心境はどのようなものだったでしょうか。
柳澤氏: 「ああ、自分もやめられなくなったな」と(笑)。というのも、澤田とは以前勤めていたNTTデータ経営研究所時代からの付き合いで、彼を支えなければと思いました。
澤田は長年、取締役としてZOZOTOWN事業をメインで担当してきたので、社長を引き継ぐには適任だったと思います。
嶺井氏: 資本業務提携後、Zホールディングスとの提携で大変だったことはありますか。
柳澤氏: 大変さや壁というものはあまり大きくなかったと思います。
ただ、ユーザーインターフェースの調整は、大きな挑戦でしたね。提携による主な取り組みのひとつに、PayPayモールにZOZOTOWNを出店するというものがありましたが、ZOZOTOWNの専業ECモールと、PayPayモールのような総合ECモールではUIに求める要素が異なります。
ファッションを売るには、カラーやサイズなどによる検索ができないといけない。でも、そうした機能を必ずしも必要としない店舗もある。とはいえ、当時のZOZOTOWN PayPayモール店は、PayPayモールのファッションカテゴリーの中での規模感も大きかったので、「まずはZOZOで売れるようにしよう」と動いていただき、早い段階から調整できました。
提携後も、緊密な協力体制を築けています。トップ同士の隔週定例ミーティングがあり、トップが集まる環境を作ってもらえています。題材は、事業の進捗や新規事業についてなどですね。
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