「客が来ないから、バイトのシフトを勝手にカット」はOKなのか? 労働条件を変更したがる企業の“2つの誤解”:知識不足ではトラブルに(2/6 ページ)
長引くコロナ禍で企業業績は二極化していますが、飲食業や観光業企業の中には、賃金カットや勤務時間の短縮に踏み切るケースもあるようです。やむにやまれず「労働条件」を変更するときのトラブル回避の心得をアドバイスします。
業績悪化により給与の減額や手当をなくそうと考えているが大丈夫か?
業績悪化により基本給や諸手当など賃金の支給額を減らしたいというパターンです。結論から言えば、社員の労働条件の中でも賃金や退職金などの重要な条件には、法律で強く保護がなされています。そのため、会社は一方的に条件の引き下げを行うことはできません。
その一方で、合意があれば労働条件の引き下げは法令でも認められています。つまり、一方的に引き下げることはできませんが、合意に基づき変更することは可能だということです。
不況でお客様も来ない。勤務シフトを減らしたいが大丈夫か?
これは、ホワイトカラーの正社員事務職よりも、飲食、小売りといった職種のパートタイマー、アルバイトといった非正規社員でよく見られるケースです。
月によって勤務シフトを決定し働くシフト制の場合で、会社が業務量や繁忙状況によって勤務シフトを減らすこと自体は可能です。ただし、この場合は、企業側の一方的な都合により勤務シフトを減らすことになりますので、賃金を全く支払わなくていいわけではありません。シフトを減らした分の休業手当の問題が生じます。
休業手当とは、企業側の都合・責任において社員を休ませた場合に、その社員に対して支給する義務がある手当です。休業手当は、平均賃金の60%に相当する額を支払わなければなりません。よって、勤務シフトの削減については、勤務シフトを減らすこと自体はできるが、一定の賃金保障をする必要がある、ということになります。
なお平均賃金と休業手当については、細かな注意点もあるため、金額を算出する際は社会保険労務士などの専門家や労働基準監督署へご相談ください。
次に、労働条件の変更がトラブルにつながる要因について見ていきましょう。
企業側の法律知識の不足や認識の甘さ
企業側が労働条件の引き下げに関するルールを理解していないことがまず挙げられます。また、理解してはいるものの業績悪化や資金繰りの苦しさなどの状況から、やむにやまれず合意を得ずにこのぐらいならいいだろう、と一方的に労働条件の引き下げを行うケースもあり得ます。こういった認識の甘さがトラブルの原因となります。
労働者側の労働条件は下がることはないという意識
日本の今までの労働環境と歴史により、労働条件は勤続年数を経るごとに昇給をはじめ良くなることはあっても下がることはない、という考えが労働者には強くあります。そのため、労働条件の引き下げが労務トラブルの原因となることも多く、慎重な対応が必要になります。
就業規則の変更、労働条件の変更が一方的にできるという誤解
就業規則は企業の働くルールを明文化した非常に重要なルールブックです。この働く上での企業のルール、待遇のルールである就業規則を企業が自由に変更できると誤解している点も、労働条件の引き下げがトラブルを生む原因になっています。
企業側が誤解している具体的なポイントは2つあります。
1つは、就業規則を変えればそのまま変えた内容を労働者に適用できると思っている点です。もう1つは、就業規則を変える際には、労働者代表者から意見を聴く必要があります。この時に、この労働者代表者のみの意見を聴く、または合意をすれば、他の労働者に対しても変更後の就業規則を適用できると思っている点です。この考えは両方間違っており、こういった企業側の理解不足が労務トラブルの原因になります。
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