「客が来ないから、バイトのシフトを勝手にカット」はOKなのか? 労働条件を変更したがる企業の“2つの誤解”:知識不足ではトラブルに(5/6 ページ)
長引くコロナ禍で企業業績は二極化していますが、飲食業や観光業企業の中には、賃金カットや勤務時間の短縮に踏み切るケースもあるようです。やむにやまれず「労働条件」を変更するときのトラブル回避の心得をアドバイスします。
丁寧に説明し根拠を明示する
不利益変更のいずれのパターンであっても、まずはなぜ労働条件を変更せざるを得ないのか、その理由や状況を社員に対して丁寧に説明することが必要です。
例えば、新型コロナによる業績悪化により、労働条件の引き下げを行う必要に迫られるような場合には、社員に対してただ業績が悪くなった、というだけではなく、決算状況、売上状況の数値・データの開示、過去実績との比較、月別の推移データなど、具体的な状況が分かるデータを開示するようにします。
上場企業と違い、未上場の中小企業では会社の業績情報、決算内容を社員に開示していない会社も多いと思いますが、労働条件の引き下げを行うような場面では、業績情報の開示は必須と言えます。また、説明の過程で社員が誤解を生むような発言や威圧的態度は避け、客観的に自由な意思で合意したと推定される状況を築いておくことが重要です。
不利益変更の代替措置を検討する
社員から合意を得るために、代償措置を用意するということもポイントになります。この代替措置の検討は必須ではありませんが、社員から納得を得やすくする、という点では重要な事項となります。
例えば、以前から多様な働き方ができるようにしてほしい、といった要望が社員から寄せられていたとします。そういった場合に、賃金の減額や昇給の停止といった労働条件の引き下げとセットで、テレワークやフレックスタイムといった柔軟な働き方を導入する、休日や休暇の日数を増やし働きやすくする、といったことが考えられます。
労務担当者として、社員からの声をまとめ、現実を踏まえた上で上司や経営者に代替措置を提案することが求められます。
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