「客が来ないから、バイトのシフトを勝手にカット」はOKなのか? 労働条件を変更したがる企業の“2つの誤解”:知識不足ではトラブルに(4/6 ページ)
長引くコロナ禍で企業業績は二極化していますが、飲食業や観光業企業の中には、賃金カットや勤務時間の短縮に踏み切るケースもあるようです。やむにやまれず「労働条件」を変更するときのトラブル回避の心得をアドバイスします。
就業規則の変更による条件変更
就業規則がある会社が、就業規則を変更することで条件変更を行うパターンです。先に述べた通り、就業規則の変更により条件変更を行う場合は、労働者代表者のみと合意するだけでは不十分で、原則としては個別に労働者全員の同意を得る必要があります。
ただし、この就業規則のルールには例外の取り扱いがあります。それは、変更した就業規則の内容を労働者に周知させており、なおかつ、その就業規則の変更内容が合理的なものであれば、個別の同意がなくとも労働条件を変更することができる、というルールです。
ここで判断が難しいのが、就業規則の変更が「合理的なものであるかどうか」という点です。判断する要素としては、条件変更により労働者が受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合などとの交渉の状況などがあります。
ポイントとしては、変更により労働者が受ける不利益が少ない方が認められやすいと言えます。例えば、会社の福利厚生や休職制度といった働く上での周辺部分の条件変更は認められやすく、賃金や退職金の減額といった労働者にとって最も重要であり生活に直結するお金に関する部分は非常に厳しい判断がなされます。
そのため、新型コロナによる業績悪化により給与をカットしたい、という場合であっても、合理性が認められないケースでは、その就業規則の変更は無効となります。
社員と同意を得ての条件変更
労働条件変更の原則に従い、社員と個別に同意を得て条件変更を行うパターンです。この個別に同意を得る際のポイントは、「労働者が自由な意思に基づいて同意をすること、そしてそのことが客観的にも分かるような同意書を整備しておくこと」です。
労働条件を変更する際に、変更内容について対象者全員の同意が得られるのであれば問題ありませんが、社員数が増えれば増えるほど全員から同意を得ることは難しくなります。この点が、労働条件の引き下げのハードルを高くしていると言えます。
労働組合との合意(労働協約)による条件変更
会社に労働組合がある場合の条件変更の方法です。労働組合との約束を取り交わした文書を「労働協約」と言いますが、労働組合がある場合は、この労働協約を締結することで組合に加入する組合員については、原則として個別の同意がなくとも労働条件の変更を行うことができます。
なお、労働協約の締結を考える上で理解しておくべきポイントがあります。それは、あくまでも効力が及ぶのは原則として労働組合に加入する組合員のみ、ということです。
例えば、会社内に過半数の基準を超える70%の社員が加入する労働組合があったとします。この場合に、労働協約によって不利益変更が有効となるのは、労働組合に加入する70%の社員についてであり、残りの30%の非組合員には効果が及びません。そのため、非組合員に効力を及ぼすにはそれぞれ個別の合意を得ることが必要となります。
また、労働協約が締結された場合でも、特定または一部の組合員をターゲットとし不利益に扱うことを目的として締結されるような労働協約の効力は否定されますので注意が必要です。
ここでは、一般的な就業規則がある会社で労働条件を引き下げる場合の変更手順とポイントについてアドバイスします。
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