「課長になんてなりたくない!」 喜べないポジションと“やりたい仕事”の幻:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)
「課長になりたくない」「管理職になってから、ぐっすり眠れない」──中間管理職の報われなさから、出世を拒む人が増えている。ビジネスパーソンは、そうした「喜べないポジション」とどのように向き合うべきなのだろうか?
「喜べないポジション」でも“物は使いよう”
出世に全く興味のなかった人が管理職になったことで「もっと上に行きたいと思うようになった」と語る人もいました。
「私は課長になりチームをまとめて、一つの目標に向かっていくうちに、自分の立ち位置は自分で作りたいと思うようになった。そのためには上に行くしかない。出世したいです」
「私の評価次第で、部下のキャリア人生が変わると思うと、すごく苦しくなります。でも、課長になったからこそ、他人の人生に関わることができた。それって面白いなって思うようになったんです。学生時代、演劇部で演出をやっていたんですね。それと通じるものがあるな、って。だから僕は、マネジメントをもっと勉強して、部下の人生の伴奏者で居続けたいと考えています」
──こう照れ臭そうに話す人もいました。
「現状を変えたくない」と感じるのは、自然の摂理です。変えないのが一番楽。ましてや、管理職になったところで、責任ばかりが増え、新しい人を採用する人事権もなければ、報酬などを決める裁量権もありません。
でも、変わるのを拒否することは、実は未来の可能性を狭めます。長いキャリア生活を考えれば、自ら狭くしない方がいい。可能性を広げておく方が、次のキャリアにもつながっていきます。
念の為繰り返しますが、中管理職は間違いなく厳しくて、理不尽で、切ないポジションです。
しかし一方で、「責任をもたされる」ことは、時にやる気につながります。学生でもなければ、アルバイトでもない。20年以上「会社員」として積み重ねてきた業績を認めてこその、責任であり、管理職です。
逆に、40歳を過ぎて、責任など一切ないポジションにしかいられない「私」を想像してみてください。組織で責任がないことは、誰でもいいってことですから、自分の存在する意味が分からなくなりがちです。たとえ「仕事はただの金を得る手段。プライベートを充実させればいい」という人でも、ルーティンに組み込まれた社会との接点でもある「仕事」は自分が考える以上に、「私」の存在に影響を与えます。
要は、物は使いよう。「正直喜べない管理職」でも、管理職というポジションの使い方次第で自分のリソースにすることが可能なのです。
ですから、もし、昇進のチャンスがあったら、一歩踏み出してほしいです。変わる勇気を持ってほしいです。
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