「悲劇」を繰り返してはいけない 園児置き去り防止サービスの開発者を取材した:タダなので使ってください(4/5 ページ)
静岡県の認定こども園で、3歳の園児が送迎バスに約5時間置き去りにされ、熱中症で死亡した。再び悲劇が繰り返されたわけだが、防ぐことはできなかったのだろうか。園児置き去り防止サービス「QRだれドコ」は、バスの乗降管理ができる「バスモード」を搭載。どのように役立つのか、開発者を取材した。
タブレット1台があれば無料導入できる
「QRだれドコ」は、南野社長が本業ではないボランティアとして、週末を使って開発をしているという。園児の置き去り事故を防止したい目的であることから、幼稚園・保育園では199人までの利用を無料としている(それ以外の施設では19人まで無料)。
開発にあたって、こだわった点をあげるならば、「シンプルさ」だと南野氏はいう。
「QRだれドコはソフトをインストールする手間がなく、ブラウザ上でログインするだけで使えます。また、QRコードなので特別な読み取り機を使う必要もありません」(南野氏)
園側で用意しなければならないのは、インターネットに接続しているタブレット、またはパソコン(カメラ付き、または外付け可能なもの※)、メールアドレス、プリンターだ。送迎バスの中、散歩中など施設外で使用する場合は、スマホがあると使いやすい。
保護者がデータを閲覧するには、インターネットに接続しているスマホ、タブレット、パソコンのいずれかとメールアドレスが必要だ。
このように導入の壁は決して高くない。実際にユーザー登録して操作してみたところ、多少のシミュレーションをすれば使いこなせるのではないかと感じた。
筆者が操作した上記の画面には、9月8日の19時15分に「バスに乗車」した記録が2回連続で登録されている。最初の操作ではこういった単純なミスが起きたが、それ以降は正しくスキャンできた。
9月8日時点の利用状況を尋ねると、スイミングスクールの生徒を乗せているバス運行会社1社が試験運用中とのこと。今回の川崎幼稚園での報道を受け、約20人が新規ユーザー登録し、園からの利用申し込み希望が2件あったというが、広く浸透しているわけではなさそうだ。
南野氏いわく、園側よりも保護者のほうが積極的な様子が見られ、「自分が試しに使ってみて良さそうなら園に導入を提案したい」と話していた保護者もいたという。
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