「生の声」を盛り込む
かつて決裁をする側として感じたこと。なぜか、「この人の提案は通したくないな」と思わせる人がいたのです。不思議なことですが、その人への他の決裁者からの評価も、ほぼ一致していました。
それはこういうこと。「現場を知らない、キレイな提案」は必ず却下したくなるのです。現場を知らないのに「儲かります」と言われたら、「大丈夫か、この人」となります。確かに、Excelの関数を使って導き出した係数も大事ですけど、「現場で何が起こっているか」のほうがもっと大事。
だから、こうしてください。いかなる提案においても、必ず現場の「生の声」を伝えるようにしてください。例えば、従業員の声、お客さまのリアルな声など。アンケートを取る必要はありません。あなた自身が現場に横たわる「不満」「不安」「不便」を聞いておけばOK。それらの「不」を解消する現場の代弁者となり、発言してみてください。きっとあなたの説得力は一気に増すことでしょう。
結論です。現場を知る人の提案は「ダイヤモンドにも勝る」、これが少しでも現場をよくしたい上司の本音です。提案をする時は、生の声を伝えるようにしましょう。
稟議を通しやすくする、3つの「数字」
ソフトバンクの孫社長は、10秒で判断できない提案は却下するそうです。その時、孫社長が求める資料は、必ず「数字」で示されていること。これは、孫社長に限らず、決裁する側の立場に立てば分かるのですが、数字のない提案は判断できないのが実情なのです。
オススメの方法があります。社内で提案をする際、“3つの数字”を入れるようにしてください。1つ目の数字は「過去・現在・未来(仮説)」の推移。2つ目の数字は、あなたの提案によって、未来がどのように好転するのかを示す数字。3つ目の数字は、その根拠を示す数字。例えば、図をご覧ください。このようにグラフで表すとさらにいいでしょう。
以前、日本屈指の大企業に携帯電話のコンテンツを提案することがあったのですが、担当者のせりふに数字の大切さが象徴されています。
「稟議を通しますので、“取りあえず”数字を示してもらっていいですか? 後は何とかします」
つまり、こちらの会社でも数字がないとはじまらないということ。ぜひ、可能な限り、数字を入れて提案するようにしましょう。
発表の持ち時間は10分。「情報のノイズ」はカット
さて、会議で提案することになったとしましょう。持ち時間は10分。その時、何に気をつけねばならないのでしょうか。答えは制限時間です。思った以上に話せないものです。
だから、あなたが絶対にやらねばならないこと、それはあらかじめ「情報のノイズ」をカットすることです。例えば、折れ線グラフ。伝えたいのは、今期は右上がりで推移していること。しかし、8月だけが、ある事情で凹んでいます。そこが「情報のノイズ」。もし、そこを質問されたら、説明するハメになり、時間切れになりかねません。決議の「持ち越し」だけは避けたい。
「右肩上がり」で推移していることを伝えたいなら、近似値として「右肩上がりの一本線」をビューンとグラフに示せばいいのです。でも、こう言うと「正直ではない……」との懸念を持たれるかもしれません。大丈夫。テレビを思い出してください。私たちは天気予報の日本地図には、能登半島の地形の正確さを求めません。
結論です。プレゼンは「何を言うか」だけではなく、「何を言わないか」を決めることも大切。ムダな丁寧さは誰のためにもなりません。ノイズはカットしておきましょう。
著者:伊庭 正康(いば・まさやす)
株式会社らしさラボ代表取締役。1991年リクルートグループ入社。法人営業職として従事。プレイヤー部門とマネジャー部門の両部門で年間全国トップ表彰4回を受賞。累計40回以上の社内表彰を受け、営業部長、(株)フロムエーキャリアの代表取締役を歴任。2011年、研修会社(株)らしさラボを設立。リーディングカンパニーを中心に年間200回を超えるセッション(営業研修、営業リーダー研修、コーチング、講演)を行っている。実践的なプログラムが好評で、リピート率は9割を超え、その活動は『日本経済新聞』『日経ビジネス』『The21』など多数のメディアで紹介されている。Webラーニング「Udemy」でも営業スキル、リーダーシップ、時間管理などの講座を提供し、ベストセラーコンテンツとなっている。
代表作に『できるリーダーはこれしかやらない』(PHP出版)、『メンバーが勝手に動く最高のチームをつくる プレイングマネジャーの基本』(かんき出版)など。YouTubeやVoicyでも情報を発信中。
公式Webサイト:らしさラボ公式Webサイト
Twitter:@Coping_coach
公式YouTubeチャンネル:研修トレーナー伊庭正康のスキルアップチャンネル
Voicy:1日5分 スキルUPラジオ
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