SOMPO、なぜ全社員を「DX人材」に? 6万人超にたたき込む“DX版読み・書き・そろばん”とは:紙業務も残る中、なぜ?(3/3 ページ)
SOMPOホールディングスがグループをあげてDXを推進している。約6万3000人にも上る国内グループ全社員を3つのタイプのDX人材のいずれかに振り分け、研修を実施中だ。しかし、ルーツをたどると明治時代にさかのぼるほどのレガシー企業だけに、アナログ文化も残っており、変容を遂げるのは簡単ではない。
DXにおける現代の「読み・書き・そろばん」とは
同社ではDX人材の育成を「DXにおける現代の『読み・書き・そろばん:ABCD』」と定義し、「ABCD」の4つの領域に分けて実施している。「ABCD」はそれぞれ、
- AI:ビッグデータの解析による分析・識別・予測
- Big Data:リアルとデジタルの境界を問わないデータの蓄積
- CX Agile:ユーザー中心設計での柔軟かつスピーディーな開発
- Design:ビジネス課題の発掘による業務デザインの設計
の頭文字からきている。
「研修は、入門編として位置付けた『基礎研修』を全員が受講した上で、A、B、C、Dの各専門的かつ実践的な研修プログラムに進む仕組みです。
中でもB研修は、外部の研修会社に委託することはせず、各社事業会社の社員自身が内情に合わせたカリキュラムを通じてデータ分析の必要性やデジタルツールの使い方などを教える形です。実務レベルのスキルに直結する内容です」(有田氏)
本格的な研修は、21年度から実施しているというが、どのようなKPIを設定しているのだろうか。
「現状では、受講者の数をKPIとして設定しています。ただ、受講者数が増えても、実際のスキルが身につかなければ意味がありません。現状、各カテゴリーの人材において、どの程度のスキルレベルが求められるのか、身についたスキルを人事データベースに反映させるための仕組みづくりを議論している最中です」(有田氏)
DX推進にはトップの本気度も大切
これまでの研修において、一定の成果を実感しているという。データ分析を習得したB研修の受講者のなかには、自分が担当する業務のデータを分析することで効率化に結びついた事例もあるそうだ。
また、D研修においては、社員がエンドユーザーの声に直接触れる機会を設けており、新商品の設計やユーザー体験の再構築に役立てているという。
「保険会社の場合、商品販売のプロセスにおいて、代理店が間に入っています。そのためエンドユーザーの声に直接触れる機会は多くありません。しかし、ユーザーインタビューを経験することで、課題の発掘や新しい価値の提供といったことの重要性に気付き、専門人材であるUI/UXデザイナーなどと連携することで新しい価値の創造につながります」(有田氏)
同社では、中期経営計画において、基本戦略に「働き方改革」を盛り込んでいる。その中でも「デジタルワークシフト(人材育成)」は重要な取り組みとして位置付けられており、本稿で紹介したDX人材育成もその一環だ。
「社員一人一人が変わらないと、DXは実現できません。それを実現するための働き方改革であり、DX人材の育成です。また、トップの本気度も大切だと考えています。デジタル化がDXにとっていかに重要であるかを当社のトップは、機会があるごとにメッセージとしてグループ各社に向けて発信しています。それゆえに、グループ全体でDX人材育成の重要性を共有できているのだと感じています」(須藤氏)
老舗企業グループがDXにより、今後どのような形で進化するのか目が離せない。
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