「部下が身勝手だ」と怒る“昭和の上司”が知らない、“令和の部下”の育て方:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
残業はやりたくない、異動もしたくない、出世なんてまっぴら──そんな新しい価値観を持つ“令和の部下”と、“昭和の上司”とのすれ違いが起きている会社は少なくないでしょう。なぜ、“令和の部下”は気ままに振る舞うのか? どうしたら、理解し合うことができるのか? 河合薫氏が解説します。
“昭和の上司”と“令和の部下”のすれ違い
“Z世代”とも呼ばれる“令和の部下”たちは、デジタルネイティブ世代です。彼らが生まれ育ったのは、コミュニケーションの手段も、教育も、取り巻く環境も全く異なる世界です。「それまでの世代とは一線を画す新人類で、手のつけようがない」と感じるのも無理はないかもしれません。
環境や人権問題などについて、昭和世代にはない彼らの視点から学ぶことは多いし、彼らのフットワークの良さに感動することもある。それだけに、彼らの意見や態度に違和感を覚えても強く出られない。
なんとかしたいけどできない、なんとかしようとすること自体間違っているのか? と頭を悩ませているのが、昭和の残り香あふれる平成の時代に会社生活を費やした、“昭和の上司”なのでしょう。
ただ、人の心はどんな時代を生きようとも、早々変わるものではありません。
どんなに「たかが仕事、普通に働ければいい」と考えていても、仕事を必死でやってしまうこともある。どんなに「自分の仕事以外、やらない」と決めていても、“チームの一員”として他の仕事を手伝ってしまうことがある。それが自然な人としての摂理であり、利他心と利己心を併せ持つ持つ「人」という存在でもあります。
“令和の部下”はなぜ、気ままにふるまうのか
では、なぜ“令和の部下”は気ままに振る舞うのでしょうか?
「境界(boundaries)」に仕事が入っていないことが、問題なのです。
人間は誰もが自分の主観的な世界の「境界」を設けています。「境界」内の大切な出来事に対して人は、できる限りのことを試し、持ち得るエネルギーを投じることができます。自分の境界の内側の出来事には、「自分にとって大切な意味がある」と意味を見いだし、それを乗り越えるためにさまざまな方法で立ち向かい、乗り越えようと努力します。
一方、「境界」外のものには無駄な力は注ぎません。それがどんなに社会的、あるいは客観的に重要で意味のある出来事であっても、「自分にとって意味のないこと」と考え、大した問題ではないと処理するのです。
つまり、気ままに働きたい若者でも、「大切だ」と思える仕事に出会って自分の境界内に入れることができれば、どんな状況にあっても、自分で考え、自分で乗り越えようと、主体的に考えて行動できるようなる。そうした心を、誰もが例外なく持っているのです。
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