今の会社で「ゆでガエル」にならないために―― 身に付けるべき“ポータブルスキル”:外資系1年目の教科書(3/3 ページ)
エンプロイアビリティのベースとなるのが、ポータブルスキル。エンプロイアビリティとは、EmployとAbilityを組み合わせた言葉で、一言で言えば「雇用される能力」のこと。
“ゆでガエル”になる可能性
当時はまだインターネットが普及する前で、ある意味、アップルが最も混沌(こんとん)としていた時期でもありました。Windows95が発売されると、直感的で使いやすいMacOSのユーザーインターフェイスの優位性が相対的に下がり、アップルの株価も10ドルほどに落ち込みました。いつどこに身売りされるのか、といううわさが常に市場で流れていた時代です。
その後、スティーブ・ジョブスがアップルに返り咲くと、iMacの大成功をきっかけに、その後はiPhoneが牽引(けんいん)してアップルの大躍進につながるわけですが、当時の同僚でいまだにアップルに残っているのは、バックオフィス系の方が2人だけです。つまり、ほとんどの社員が転職もしくは自分で会社を興しました。ご多分にもれず、私もアップル卒業後は外資系のIT業界を渡り歩くことになりました。
それとは対照的に、従来型の日本企業では、年功序列の色彩が強いことから、いかにその組織にうまく適応、融合し、長く働けるか、ということに重点が置かれてきました。事実、昭和の時代では、ひとつの会社に忠誠を尽くすことが求められていたのではないでしょうか。
優秀と言われる人ほど上手に組織に適合して、ひとつの組織の中でどれだけ上にいけるか、ということに意識が注がれていたのではないかと思います。それについては否定も肯定もするつもりはありませんが、その組織でしか通用しないような理論や慣習が脈々と受け継がれることも起こり得ます。いわゆるガラパゴス化です。
ひとつの会社しか知らない場合、意識的に社外の人と関わり、外の世界に好奇心を持つなどして環境変化に敏感にならない限り、いわゆる“ゆでガエル”になる可能性が高まります。社内の常識が世の中の常識であると勘違いしてしまうのです。
また、その会社では通用したとしても、社外では通用しない、または、時代遅れで、それほど市場価値がなかったということにもなりかねません。その会社の中だけで通用する共通言語が使われ、ひとたび外に出てみたら、その言葉の意味が通じないということも多々あるのです。
著者プロフィール:山口畝誉(やまぐち・うねみ)
株式会社MCJ社外取締役、U・アカデミー代表 全米NLP協会認定トレーナー&ビジネスコーチ、コンサルタント、元日本マイクロソフト ゼネラルビジネスマーケティング統括本部長、米国ロチェスター大学大学院経営学修士(MBA)
東京都文京区生まれ。立教大学卒業後、外資系企業に就職。ロータリー財団奨学金にて米国へMBA留学し、帰国後アップル日本法人に入社。その後現日本HPにマネージャーとして転職。当時36歳で約3000人の社員の中、唯一の最年少女性部長に昇格。女性としては最年少で部長に昇格。
現日本オラクル、現デル・テクノロジーズを含む外資系ITベンダー7社で25年間にわたり要職を歴任。女性企業社会進出のパイオニアとしてキャリアを歩む。
リコージャパン執行役員兼リコーITソリューションズ取締役を経て、大病の早期発見と克服をきっかけに、人生は一度きりと考え独立。趣味のゴルフでは、56歳で自己ベストを更新。デビュー当時から郷ひろみの熱烈ファン歴50年。
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