ITスキルに無縁の52歳が「DX人材育成」されて分かった、ミドル・シニア世代をリスキリングするコツ:抵抗感をどうなくす?(2/3 ページ)
しばしば問題化する、ミドル・シニア層のリスキリング。人材不足の背景や定年再雇用も見据え、新たなスキルの習得を期待する企業側と、「今から新しいことを学べと言われても……」と困惑するミドル・シニア世代の間で、すれ違いが起きかねません。
「なぜこの歳になってリスキリング?」の疑問に答える
ミドル・シニア世代をリスキリングする上で最も大切なのは、学びのモチベーションを作ることです。正直に言うと、取り組む前は筆者も「なぜ自分がデジタル関連のリスキリングをしなくてはいけないか」が分かりませんでした。52歳の筆者が、今からプログラマーやデータサイエンティストになろうとは思えません。
だからこそ、まずは社員のリスキリングを推進する立場である人事の方が、リスキリングのメリットや、自社の置かれた状況を踏まえ、必要性を説明することが大切です。そして、学び直しによって、今後どのように会社に貢献してほしいかという期待値もセットで伝える必要があるでしょう。
筆者の場合は、「若手とミドル・シニア世代のDX知識の差を埋めたい」「一部の人だけにIT知識があると負荷が集中しがちなので、全体的にITリテラシー向上&常識化したい」「仕事の幅を広げ、アイデア力向上につなげてほしい」などの会社側の期待値を説明されました。
基本的なIT用語のサポートを用意する
同世代の仲間たちと話していて感じるのは、IT用語やデジタルスキルというものになじみを持っている人が少ないということです。筆者たちの世代にとって、これらの概念は学生時代にはまだなかった技術で、大人になって突然出てきたもの。デジタルネイティブ世代に比べれば、やはり抵抗感が大きいです。
では、その抵抗感を減らすにはどうすればいいのか。ミドル・シニア世代には、最初に基本的なIT用語集や初心者向けの書籍、動画を事前配布することをおすすめします。
筆者が学習中に最も億劫(おっくう)に感じたのは、用語を調べる作業でした。例えば「ソフトウェア」や「データベース」という言葉は、若い世代はなじみあるものかもしれませんが、筆者は毎回意味を調べなくてはなりませんでした。このような作業が入ると時間もかかり、モチベーションの低下につながります。用語集などを渡しておいて負担を軽減するだけでも、モチベーションに影響があるかもしれません。
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