「ジーユー以上、ユニクロ以下」の価格帯で勝負 FOREVER21、日本市場で“三度目の正直”となるためのカギは?:磯部孝のアパレル最前線(2/3 ページ)
2023年、日本市場への再チャレンジを発表したFOREVER21。過去に二度の撤退を経験しながら、今回を“三度目の正直”とできるか。勝負する価格帯は、「ジーユー以上、ユニクロ以下」となり、激しい価格競争も想定される中、成功のカギはどこにあるのか。専門家が分析する。
今後、同社は「トレンド&ハイクオリティー」への転換を目指すとのことだ。デビューシーズンとなる23年夏は、日本オリジナル企画を80%、本国からのインポート企画を20%のバランスで、その内20%をサスティナブル商品とする。アダストリアグループ全体の、「30年までに全商品の50%」という目標に準ずる形で、これからもサスティナブル商品の比率を高めていく考えだ。
品ぞろえについては、(1)Vintage(2)Basic(3)Feminine(4)POP (5)Street(6)Modeという6つのファッションテイストを網羅する予定。ターゲットは10代後半から30代前半で、本国で取り扱いのあるメンズを取り扱うかは今のところ分からないが、後述する再々上陸1号店の告示を見るに、当面はレディースのみで展開する公算が高い。
平均商品単価は4000円、想定客単価は5800円とのことで、買い上げ点数を算出すると1.45点になる。アダストリアグループが考えている新生FOREVER21のマーケットポジショニングは、下記の位置にある。
ユニクロと同プライスor安く、ジーユーより高くor同プライスといったプライシング(価格帯)を計画しているようだ。自社内のポジショニングを見ると、再安値の価格帯を付けているラコレより、同価格帯or安い価格帯を設定している。いずれにせよ、もともとファストファッションとしてのイメージが強いブランドだけに、求められる値頃感を意識せざるを得ない事情が見えてくる。
アダストリアグループで成功を収めてきたB2Cブランドの共通要素は、若者に向けてエッジを効かせたトレンド感とバリュープライスだ。先のマーケットポジションでは、FOREVER21はアダストリアグループの旗艦ブランドであるグローバルワークやニコアンド、また他社ブランドのH&MやZARA以上にファッション軸に寄っている。12月初旬に発表されるデビューコレクションが注目される。
カギは「EC」か
とはいえ、今後新戦略に沿ってローカライズしていくにせよ、FOREVER21が既に獲得してきた認知度やイメージを大胆に裏切ることはできない、しないのではないかと考えている。そもそも、FOREVER21は1984年に韓国系アメリカ人が、ロサンゼルス郡内に住む韓国系移民の若者向けに作られたブランドだった。
09年の再上陸時にも米国西海岸を彷彿(ほうふつ)させる米国カジュアルといったイメージを振りまいた。本国でリブランディングを果たした直近の店内動画を見ても、筆者の印象としては当時とさほど変わらないように見受けられる。当時のFOREVER21愛好者が期待するのも、往時の西海岸な米国カジュアルテイストだと推察され、軸はぶらしていないようだ。
価格に関して、昨今は円安、物価高とバリュープライスの実現が厳しい環境となっている。上述した価格感を実現するには、グループ力を生かした素材調達や工場選定などの“企業努力”をしても、原価率がレギュラーブランドと比べ割高になってしまう。そこで、「EC率60%」という実店舗コストを抑えた施策が登場したと推察できる。上で挙げた人気B2Cブランドを抱える同社であれば、保有するノウハウを社内共有することで実現不可能なEC化率ではないだろう。
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