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新型クラウンの“仕上がり”はどうなのか、チェックした池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/6 ページ)

新型クラウンが登場した。前編では「なぜ大変貌を遂げたのか」その理由などを紹介したが、後編では「仕上がり」を解説する。デザインやインテリアなどは……。

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デザインは大胆に変えた

 デザインについては、これまでのガチで保守的なものから大胆に変えてきた。ルーフを上げつつも薄らデカい感じを可能な限り消そうとしたクーペデザインで、特にツートン塗色ではその意図が色濃く表れている。長く流麗に見せることよりも、塊としての造形を打ち出す方向性だ。


セダンのお手本ともいえるメルセデス・ベンツ(W124型)

14代目クラウン

15代目クラウン

16代目となる今回のクラウン・クロスオーバー

16代目となる今回のクラウン・セダン

 14代目までは、フェンダーのラインが前から後ろまで真っ直ぐ貫く造形で、デザインのテーマは「伸びやかな疾走感」にある。15代目ではそれがCピラーの位置で曖昧になって、クーペライクなデザインとセダンらしい伸びやかさのデザインが互いに打ち消し合ってしまっている。少々乱暴に言えば、ボディデザインにおいて、クーペはルーフラインが主役であり、セダンはフェンダーから続くウエストラインが主役となる。

 14代目はウエストラインを優勢に決め、セダンの流儀に則って、ルーフラインの存在感を一段落としている。15代目は両方を生かそうとした結果、Cピラーの根元で両者がぶつかり合って流れを止めてしまい、どちらの流れも後ろに抜けていかないのだ。その苦しさをAピラー前から引いたキャラクターラインで救おうと試みているが、構造そのものの形をたかがプレスラインでカバーできるものではない。

 対して今回のクラウン・クロスオーバーはボディの厚みを生かした力強さを持たせつつ、リヤタイヤの上で一度ウエストラインをキックアップさせて、後輪の蹴り出し感を表しつつ、ルーフから降りてくる面とウエストラインの間の黒い化粧プレートがデザイン上の整流板の役割を果たし、ウェストラインの流れも、ルーフラインの流れも、相互に阻害されないように配慮している。

 クーペでもあり、セダンでもあり、さらにアンダーボディの厚みとタイヤの踏ん張り感が示すSUV要素もある。フロントドア下からリヤドアのハンドルに向けて駆け上がっていく陰影はアンダーボディの存在感を強調するためで、15代目と比べると、その違いは明確だと思う。

 セダン、クーペ、SUVの3つの要素を打ち消し合わないデザインにまとめて見せたのはまさに“クロスオーバー”の名前に恥じないデザインである。トヨタのデザインレベルの急速な進歩を感じる部分である。

 余談だが一番下の新型クラウン・セダンは、このウエストラインを前から後ろまで貫くというセダンらしいクラシカルなテーマを受け継いだことでフォーマルな形を表現しているのが分かる。特にテールエンドの処理がクロスオーバーとは異なり、ウエストライン優勢のまま真っ直ぐ抜けていっているところが本当に分かっているなあと思わされる。クラウン・クロスオーバーとはデザインの最も重要なモチーフが違うのだ。

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